働く広場2022年12月号
24/36

の製造だ。専任の作業者として、現在はピッキングや組立、検査、出荷調整までの一連の作業を一人で担当している。障害のある社員と働くうえで、迫田さんは「当事者とともに働くメンバーとの関係性をとても大切にしています」と話してくださった。実は谷垣さんと出会い、アドバイスをもらう前は、試行錯誤の連続でとても悩んでおり、「私を含め、内藤さんに対する遠慮があり、接し方がわからないという従業員が多かった」そうだ。「谷垣さんに教えていただいたことは、一人ひとりの特徴に合わせた仕事づくりや、光や音など職場の環境を配慮し改善を図ること。また、レベルに応じた能力開発を行い、現時点よりも少し難易度の高い業務にチャレンジしてもらうことで、内藤さんの向き不向きの業務が具体的に理解できるようになりました」と迫田さんは話す。迫田さんと一緒に谷垣さんのセミナー        始うなって首をひねりながらセミナーをを受けた浜田さんは、「迫田さんは、終聴いていました。自分の接し方とあまりにも差がありすぎる、と。最後に質問の時間があり、手をあげたことがきっかけとなり、谷垣さんが気にかけてくださるようになりました」とふり返る。また、浜田さん自身も内藤さんとのコミュニケーションを通じて人の見方に変化があったと語ってくれた。谷垣さんは当時の職場の様子を、「内藤さん自身が感じている障害特性と、周りの方から見た特性にズレがあるように感じました。そこで、『現在の内藤さんの状況を冷静に見て判断し、対応方法を考えましょう』とお伝えしました。また、他社の担当者と比べると、迫田さんと浜田さんは『できることはすべて取り組もう』と、躊躇なく積極的に臨まれる姿が印象的でした」と話してくださった。こういったお二人の姿勢が功を奏し、内藤さんとの関係に変化が出てきたそうだ。また、谷垣さんは定期的に日東精工を訪れ、アドバイスを続けた。「谷垣さんは私たちがいままで行っていたことや感じていたことと、まったく違う新しい世界を教えてくれました」と、浜田さんはいう。それまでは、「これぐらいまでならできるだろう」という作業しか、内藤さんには任せていなかったそうだ。「ほかに何ができるか」や「戦力になってもらおう」とは、考えたこともなかったとのこと。障害のある社員が就労継続するための一つのポイントがこのエピソードにあると考える。合理的配慮のみならず、最高のパフォーマンスを発揮して戦力化するためにどうするのかを考えることが必要なのだ。お二人の当時のエピソードを聞いて、当事者の内藤さんはどのように感じたのか。「入社する前から、『健常者と障害者の壁があるなぁ』ということは感じていました。『発達障害のある人はこうだ、こう接するべきだ』というように断言されているような気がしていました。しかし、いまはその壁がなくなりました」と、内藤さんはふり返る。壁は一体どのように取り払われたのか。内藤さんは「SPISを導入してから、『リアルSPIS』と呼ばれる、実際に会って面談する機会も設けられるようになりました。そこで浜田さんと迫田さんの本音を聞くことができて、壁が少しずつなくなっていきました」という。浜田さんは、SPISを導入する際に内藤さんに「これからは戦力として活躍してもらいたい」と話したことを覚えているそうだ。そして、「最終目的は内藤当事者に対する遠慮があり接し方がわからなかった「ほかに何ができるか」「戦力になってもらおう」自分の気持ちをいってもいいとわかった内藤さんは、ねじ締めドライバの組立や検査など、一連の製造工程を担当している働く広場 2022.1222

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る