働く広場2022年12月号
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さんに実力をつけてもらい、賃金を上げることだ」と明言した。一方、内藤さんにより近い立場で接していた迫田さんは、障害者雇用に関する知識を深めるため、社外のセミナーに積極的に参加するようになった。そして他社の障害者雇用の取組みについて学び、多くの方と交流を始めていくなかで「内藤さんといままで全然〝本心〟でかかわれていなかった」と感じたそうだ。特に「自分の気持ちを内藤さんに伝えてみたらどうか」とアドバイスをもらったことは印象的だったようで、「いっても大丈夫なんだ、ぶつかってもいいんだと思えた」とふり返る。ところで、お二人はどのようにしてSPISに出会ったのか。さまざまなセミナーに参加していた迫田さんは、2019年2月、京都府舞鶴市で開催された「舞鶴市障害者雇用支援シンポジウム」で、すでにSPISを導入している企業の体験発表を聴いた。「ある大手企業がSPISについて発表されていて、すごく楽しそうだなと感じました。これは内藤さんと深くかかわることのできるツールだと直感し、ぜひ利用してみたいと思い、谷垣さんに相談したところ、京都府のモデル事業に誘っていただきました」当事者の内藤さんは、迫田さんから「SPISをやってみませんか?」と誘われたとき、どのように感じたのだろうか。「どういうものなのかなと疑問がありました。『やってみよう』と強く決意して始めたわけではなく『とりあえずやってみるか』という感じでした。その後、一般社団法人SPIS研究所(以下、「SPIS研究所」)理事長の宇■田■亮■一■■さんと、外部支援員の灘■友■千■紘■さんが来てくださり、説明を聞き、2019(令和元)年6月からスタートしました」それから約3年。続いているのには理由がある。「趣味のことを話せたり、人間関係に困ったときにアドバイスをもらえることがとても助かっています。迫田さんや、SPIS研究所の外部支援員である灘友さんを中心に、浜田さんもたまに返信してくださいます」SPISを始めてみて、迫田さんは     ■■■   係の悩みを知ることができ、面談の場を「コミュニケーションが深まりました。社内では聞くことができなかった内藤さんの本当の気持ちや、職場での人間関つくったり、上司に相談することができるようになりました。困ったことがあったときに発信してもらえると、こちらもすぐに動けます」と、そのメリットを力■■説する。コメントのやり取りのみならず、コロナ禍前は月に一度は、実際に会って行う『リアルSPIS』と呼ばれる面談を実施。参加者は、灘友さん・谷垣さん・浜田さん・迫田さん・内藤さんに加え、人事担当者も一名参加。まずは内藤さんと灘友さんの二人で面談し、その後に迫田さんが入って三者面談。最後に内藤さん以外の支援者だけで現状報告やアドバイスをもらっているそう。いまは3カ月に一回ほど開催し、会社への訪問がむずかしいときはオンラインツールを活用して、内藤さんが続けたいと希望するかぎり、今後もリアルSPISは続けていくとのこと。事の幅は大きく広がった。「当初は製造の作業と、書類をデータ化するという作業の2種類だけでした。その後、特殊なパーツをつくる作業を手がけるようになり、SPISを始めてからはさらに増え、いまは4種類になりました」内藤さんの成長する様子を、谷垣さんは「仕事の量よりも、質が格段に上がった」と表現されている。また、「質が上がったことで、周りの人の見る目も大きく変わったように思います」とのこと。SPISを通して当事者と深くかかわりたい仕事の量よりも質が格段に上がった18歳で入社して7年、内藤さんの仕一般社団法人SPIS研究所理事長で臨床心理士の宇田亮一さん SPISの入力画面(例)(写真提供:一般社団法人SPIS研究所)働く広場 2022.1223

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