働く広場2022年12月号
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ありがとうございます。辻村賞は、特総研の初代所長を務め、日本の特殊教育制度の基盤整備と発展に大きな力を果たした故・辻つ村む泰や男お先生(1913~1979年)の功績を記念して創設されました。このような賞をいただき、たいへん光栄に思っています。辻村先生は、東京帝国大学(現・東京大学)文学部心理学科を卒業後、戦前は傷し痍い軍ぐ人じの救護活動に従事、戦後は旧厚生省で戦災孤児らの児童福祉問題を担当しました。1952(昭和代室長として公立養護学校の整備について立法施策にかかわり、特総研では特殊教育の調査研究や担当教員の研修充実に尽力されました。1979年4月1日に養護学校教育義務制が実施されましたが、この日は辻村先生ご逝去の日でもあります。私自身は、東京教育大学(現・筑波大学)で辻村先生の「児童福祉学」に学び、知的障害児者のための「全国手をつなぐ親の会(現・一般社ょう団法人全国手をつなぐ育成会連合会)」(以下、「親の会」)の活動に加わりながら、特別支援教育のあり方を模索するようになりました。当時は「暮らす・学ぶ・働く」という社会権的基本権が障害者に保障されず、特に教育においては「就学義務の猶予・免除」の対象で、「障害の重い子は、教育を受けなくてもよい」という既成概念がありました。そこで「新宿区手をつなぐ親の会」が先頭になり「保護者の就学義務の猶予・免除の願い出をしない運動」を展開、これを受けて東京都は1974年に重度障害児学級を設置し、障害児全員就学を実施したのです。国の導入は5年後の1979年でした。入れてほしい」と背中を押されました。親の会や全日本特殊教育研究連盟(全特連、現・全日本特別支援教育研究連盟)など知的障害関係4団体からつくる「社団法人日本精神薄弱者福祉連盟」(現・公益社団法人日本発達障害連盟)の長期行動計画作成では、委員として「就労」の項目を担当し、障害者雇用施策にかかわる国の審議会委員なども務め、活動を続けてきました。――1993︵平成5︶年に開設した﹁養護学その後、私は親の会から「今後は就労に力を﹁辻村賞﹂を受賞主体性のある進路指導を︱︱本誌﹃働く広場﹄元編集委員でもある松矢さんは、特別支援教育における長年の功績が認められ、2022年2月に、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所︵以下、﹁特総研﹂︶から﹁第35回辻村賞﹂を授与されました。おめでとうございます。校進路指導研究会︵進路研︶﹂は、学校の先生や企業も参画し、職業教育の向上につなげていきました。27)年から当時の文部省内の「特殊教育室」初働く広場 2022.12   んんじらす 2全日本特別支援教育研究連盟顧問、東京学芸大学名誉教授松矢勝宏さんまつや かつひろ 1940(昭和15)年、東京都生まれ。全日本特別支援教育研究連盟顧問、東京学芸大学名誉教授、NPO法人GreenWork21理事長、社会福祉法人森の会理事長。1971年、東京教育大学(現・筑波大学)大学院博士課程修了。同年から2014(平成26)年まで大正大学、東京学芸大学、目白大学で教鞭を執る。全日本特別支援教育研究連盟理事長(2007〜2019)、厚生労働省・東京都の各種委員などを歴任。著書に『キャリア教育の充実と障害者雇用のこれから―特別支援学校における新たな進路指導』(共編著、ジアース教育新社、2013年)など。特別支援教育の変革とこれから

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