働く広場2022年12月号
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創業100年を超える大手総合化学メーカー「旭化成株式会社」が1985(昭和60)年に設立した特例子会社「株式会社旭化成アビリティ」(以下、「旭化成アビリティ」)は、宮崎県延の岡おの地で10数人規模からスタートした。いまでは延岡をはじめ水島(岡山県)、大阪、富士(静岡県)、東京の全国5営業所まで拡大し、全従業員は466人、うち障がいのある従業員は372人(身体障がい163人、知的障がい72人、精神障がい137人)まで増えた。旭化成グループ23社をグループ適用した障がい者雇用率は2・37%(2022︿令和4﹀年6月1日現在)になるという。雇用人数の増加とともに業務開拓も進めてきた。グループ会社からの委託をメインに事務補助や図面などのデータ化、メール配送、印刷、各種資格の受験・受講手続き代行、縫製などのほか、農業やょう窯よ業ぎなどにも挑戦している。2018(平本も知と行ゆさんが語る。ちうろらげたべかきもとしう5成30)年から代表取締役社長を務める押お「電子化やペーパーレス化が進み、受注内容はどんどん高度になっています。私たちも全体の業務スキルを上げながら、グループ会社の業務の流れの一部分に必須の組織として組み込まれるような中核会社を目ざしています」今回は最重要生産拠点として従業員300人近くが在籍する延岡営業所を訪ねた。案内してくれたのは、2009年に旭化成ホームズ株式会社(以下、「旭化成ホームズ」)から異動し、10年にわたり所長を務める工く藤ど通み洋ひさん。「当時の社長から『明るさを大切にしてほしい。暗い上司には相談したくないだろうから』といわれたことを忘れずにいます」と笑いながら明かしてくれた。延岡営業所の大きな業務の一つが、業務部業務課で担当している「縫製」だ。全国のグループ会社の工場などで働く約6500人分の作業服の受発注とともに、サイズに合わせたすそ上げやネームづけがおもな仕事だが、パソコン運搬用バッグ、小物入れなどの製作も手がける。ミシン技術は専門の外部指導員が指導し、これまでに全国アビリンピックの金賞受賞者を2人輩出している。その1人が北き村む重し雄おさん(33歳)だ。特別支援学校を卒業後、木工家具の会社で働いていたが、修理を1人で担当することになり責任の重圧で退職したという。その後、就労移行支援事業所を経て2012年に入社した。半年後に縫製担当になり、すぐにアビリンピックへの挑戦をすすめられ、2016年に2回目の出場となった第36回全国アビリンピックで金賞に輝いた。「アビリンピックで実力を認められたことで、むずかしい仕事も任されるようになったと思います。バッグの製作を布の裁断から完成まで1人でやり抜いたときは、大きな充実感がありました」POINTアビリンピックに積極的に参加、意欲向上や顧客開拓のきっかけに1「活き活き推進部」を軸に職場理解の拡大や現場の後方支援を図る2新規分野に挑戦しつつ、受託スキル向上で旭化成グループの中核を目ざす3全国5営業所で多様な業務全国アビリンピック金賞受賞者輩出の「縫製」代表取締役社長の押本知行さん延岡営業所所長の工藤通洋さん★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社旭化成アビリティ様のご希望により「障がい」としています業務部業務課で縫製作業を担当する北村重雄さん(左)と炭田大介さん(右)働く広場 2022.12

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