働く広場2023年1月号
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POINT123株式会社オート(以下、「オート」)は、従業員23人に、派遣会社からの派遣社員5人を合わせた28人で、フォークリフトなどの油圧バルブの部品を製造している。28人のうち7人が障害のある従業員である。社屋は長野市の東側、山々が囲む千■■曲川■沿いの堤防近くにある。やがて信濃川へとつながる千曲川の川沿いの自然豊かな環境に工場もある。しかし、代表取締役社長の上■原■隆■さんによると、3年前の台風19号による河川の氾濫で、工場の1階部分が水没する被害を受けたという。社員総出でその災害から立ち直り、いまの工場での事業が継続しているとのことだった。代表取締役専務の山■田■ゆかりさんにお話をうかがった。障害のある人の雇用を始めたのは14年ほど前。地元のハローワークの紹介で、高次脳機能障害で精神障害■■のある人を採用し、トライアル雇用から始め8年間働いてもらった。次に採用したのは、精神障害者保健福祉手帳を持つ2人であった。どの部署に配属し、どのような仕事をしてもらうかは、試行錯誤の連続だったという。そうしたなか、山田さんと長野県長野養護学校の進路指導主事の小■林■弘■明■先生が出会うことになる。出会いのきっかけは、地域にある中小企業家同友会の会合だった。会員企業による障害者雇用についての研究会があり、参加した特別支援学校の進路指導の先生方と山田さんは連絡を取り合うようになったという。会員の中小企業では、社会が大きく変化するなかで、人材不足と社員の高齢化の課題に直面していた。そのような状況を打開するべく、長野養護学校の在校生の職場実習が始まり、卒業生の雇用がスタートする。山田さんによると、オートの業務内容は油圧バルブの部品製造であり、金属加工の精密さはミクロン(1000分の1㎜)単位で求められる。その分工程が多く、精巧な測定器を取り入れることで、品質の高い製品を製造できるようになった。障害のある従業員のそれぞれの適性や能力を見ながら、1年ほどをかけて一人ひとりの特性に合わせた作業工程を探し、担当してもらっている。そのために視覚的にわかりやすい作業マニュアル、■■手順書を作成し、だれもが使えるように標準化をしている点が優れていると感じた。人材不足が深刻化するなか、工程を細かく分けて作業を標準化することで、雇用する従業員の幅を広げ、定着を図ってきた実績がある。5年ほど前からは、オートの近くにある社会福祉法人夢工房福祉会が運営する就労継続支援B型事業所「ハルル」から、施設外就労として利用者を受け入れている。ちょうど取材時にハルルの利用者たちが働いているところを見学できた。職員1人に利用者6人ほどのチームで、部品を入れる箱の油の拭き取りと洗浄を担当していた。山田さんによると、この作業があることで部品の品質が上がり、加えて作業マニュアルと作業手順書の蓄積により、ISO(国際標準化機構)の規格も取得してきた。製品を入れるケースを常にきれいにしておくことは必要な作業だが、人材不足のなかでは苦労が多かった。それを解決できたのがハルルのような地域の就労継続支援B型事業所との連携だったという。小林先生の案内で、翌日にハルルを見■  ■ ■■■■ ■■  学させていただくことができた。長野市の東側、須■坂■市にある法人所有のビル(大型スーパーマーケットの空き店舗を改修)内には、1階に就労継続支援B型事業所ハルルと、法人事務局、相談支援事業所が、2階には、就労継続支援A型事業社員一人ひとりの特性とよさを引き出しながら育てる株式会社オート代表取締役社長の代表取締役専務の山田ゆかりさん(左)長野県長野養護学校進路指導主事の株式会社オート上原隆さん(右)と小林弘明先生働く広場 2023.121地域で育つ、育てるよい学びは成人期を豊かにする良好なコミュニケーションは主体性を伸ばす

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