働く広場2023年1月号
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の理解と協力が必要である。学校の進路指導の先生が、生徒の特性をふまえて、担当できそうな仕事を一緒に考えてくれた。教え方やコミュニケーションの取り方も、実習を通して引き継がれていく。実習から採用につなげるためには、機械を安全に操作し、けがをしないような配慮、安全に通勤できる支援などの労働安全衛生の課題がある。それを解決するためには、生徒のできる作業や工程を、関係者が一つずつ確かめながら増やしていくことが必要となる。長野県も含め、地方のおもな移動手段は自動車である。公共交通機関の利用だけでは、通勤範囲に限りがある。山本さんも工業団地の入り口まではバスで通勤し、そこからは宮川さんをはじめとして、従業員のみなさんが交代で送迎している。自転車での通勤も考えたものの、雪が降る冬の通勤はむずかしい。将来は普通自動車免許を取得することも考えられるが、本人の努力と関係者の協力が今後も必要となる。雇用を継続するためには、従業員の働く力を育成するとともに、安全に通勤できる環境の整備が大切であることをあらためて感じた。最近、宮川さんは障害のある人の社会参加の場として、雇用だけではなく、地域の清掃や地域の子どもたちとの活動をつくり出す機会を考えている。その一つとして、アウトドア用品や日常のオリジナル用品を制作する事業を行う「まるのび商会」を立ち上げた。たき火台や薪ストーブ、バーベキューコンロなど、ロゴやイニシャルを入れて、オリジナルアイテムを制作している。「地域」のなかで障害のある人にかかわる人がつながり、新たな「地域」をつくり出す営みが生まれるかもしれない。長野県長野養護学校の本校は、長野市の北東に位置し、山の中腹にある小高い丘の上に建つ。周囲は丘陵地帯であり、りんごなどの果樹園が並ぶ。本校には寄宿舎が併設され、児童生徒数が増えるごとに増築されてきた。しかし近年は小学部・中学部の生徒は地元の学校に通うようになり、寄宿舎利用者も減ってきているとのことである。分教室は3校ある。「三■輪■教室」は、長野地区特別支援教育相談センターが併設されており、小学部の児童が学んでいる。「朝■陽■教室」は、長野県長野盲学校に併設されており高等部の生徒が学んでいる。「すざか分教室」は、統廃合された高等学校の空き教室を利用して高等部の生徒が学んでいる。これら分教室を加え、同校全体で今年度は231人の児童生徒が学んでいる。創立は1961(昭和36)年で、長野県で最初の「養護学校」である。近年、ほかの自治体が「特別支援学校」と名称を変えているなか、こちらでは「養護学校」の名前を残している。教育方針を『すべての子どもの人権が   ■ 「自分から 自分で 尊重され、子どもが主体となる教育をすすめる』とし、社会参加するうえで大切な「本人による本人のための権利擁護の意識」、すなわち「自分は自分でいいんだよ」を感じられる教育活動を中核とし、個々の可能性と能力を最大限に伸ばす教育を目ざしている。学校教育目標の養護学校全体の共通目標)は、児童生徒めいっぱい」(長野小中高の一貫した教育と特色ある分教室の「長野養護学校」フラワースタンドや木製パズルを作成する陶芸班では、成形作業を行っていた紙すき班が作成した色とりどりの名刺や封筒木工班の作業の様子。長野県長野養護学校本校りんご畑の間を駆け抜ける校外のマラソンコース 代表取締役の宮川岳洋さん伸商機工株式会社部品の面取り作業を行う山本さん伸商機工株式会社働く広場 2023.123

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