働く広場2023年1月号
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がいのある人を受け入れる予定のある職場に業務の一覧を作成してもらい、その業務内容を検証し、候補となる方を選んでいます。例えば特別支援学校からの採用には、二つのステップがあり、まずは当社における実習で適性を見きわめます。その後、実際の職場となるグループ企業での実習を経て本採用に至ります。なかには、1年生から3年生までの3年間実習をくり返す方もいます。その間、特別支援学校と情報を共有しながら候補者の成長を見守っています。採用活動は、3年後の当社における障がい者雇用のビジョンのもと行っており、マッチングに時間をかけて採用した方には、安心して長い期間働き続けてほしいと考えています」(柴野さん)障がい者の採用にあたり、重要なことは、職場や同僚の理解です。同社では、グループ各社の社員に、障がい者や障がい者雇用に対する理解を深めてもらうための「教育」にも、力を入れて取り組んでいます。「当社が提供している教育活動は、大きく2種類に分けられます。一つは、障がいのある社員に対する職場適応や生活管理のための教育、もう一つは、障がいのある社員の上司や同僚となる社員を対象にした教育です。特に後者については種類も多く(図)、『障がい者雇用に関する基礎的な知識の研修』、『業務の切り出しやコミュニケーション方法などについての研修』、人事・総務担当者などの『職場の障がい者雇用を支える立場の人に向けた研修』、また、実際に障がい者の受け入れ予定のある部署の従業員を対象にした『受け入れ社員の特性の解説』など、立場や状況に合わせた内容で実施しています」(障がい者雇用支援センタ/腰■塚■裕■一■■さん)採用した社員が安心して長く働き続けることができるよう、「定着」については支援機関や家庭などと連携しながら対応しています。「例えば、特別支援学校から新卒で入社した社員の場合は、職業生活上の課題が生じた際にスムーズに対応するため、登録している生活支援機関にかかわってもらっています。生活面のサポートは支援機関で、業務や就労については『障がい者雇用支援センタ』で、というように役割を分けながら、当事者の面談に同席し、職場からの相談に応じています。支援機関と当センタの二つの相談窓口があることは、障がい者雇用に不慣れなグループ企業にとって、心 ■■■  ■■強い環境になっているのではないかと思います」(障がい者雇用支援センタ長/井■上■謙■さん)設立から約5年。『障がい者雇用支援センタ』では、これまでに幅広く実習を受け入れ、100人程度をグループ企業で採用してきました。離職率は低く、2022年3月末日現在、グループ全体の障害者雇用率は3・02%となっています。「当センタが設立されて約5年が経過したいま、グループ各社からは、『障がい者雇用によって職場の雰囲気が明るくなった』、『障がい者の受け入れのために業務の分析をすることで、業務の効率化につながった』などの声も聞かれ、障がい者雇用に対する理解が深まっていると感じます。最終的な目標は、グループ各社が、当センタのサポートの手を離れて自立して障がい者雇用に取り組めるようになることです。また、ITなどの高度化する業務内容に対応するためにはより多様な人材の雇用が必要ですので、精神・発達障がい者の雇用や経験者採用などにも力を入れて取り組んでいきたいと考えております」(井上さん)「多様な能力を持った人に当グループで働いてもらうためには、障がいのある人に選ばれる企業になることが大切です。そのためにだれもが働きやすく、笑顔があふれる職場づくりに努めていきたいと思います」(工藤さん)■■教育や定着もサポート障がいのある社員は、それぞれの特性や得意分野を活かして業務を行っている(写真提供:株式会社日立ハイテクサポート)<参考1>「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」ウェブコンテンツ版「Q 障害者に対する人材育成等の視点を踏まえた支援について必要なことは何ですか?」https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003lymk.html(資料提供:株式会社日立ハイテクサポート)<参考2>資料シリーズ No.105「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/shiryou105.html図 教育体系図27

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