加藤さんの在籍する人事教育部では、障害のある従業員の職場適応や定着にあたって、何か問題が起きたときに採用店舗の責任者から相談を受けつけています。加藤さんは、「人事教育部では、人事、教育、福利厚生などのサポートを行っており、障害の有無にかかわらず、従業員の健康管理やメンタルヘルスなどについての相談を受けつけています。このような背景から、障害のある従業員についての相談も多く寄せられます」と話します。特に多いのは、遅刻や欠勤などの勤務態度についての相談、合理的配慮を考慮した対応策や指示の出し方についての相談、従業員同士の人間関係についての相談などです。加藤さんが続けます。「障害のある従業員の所属する部署の上司や同僚から、店舗単独では対応できない相談が寄せられることが多いです。このような場合、人事教育部では相談事に対して、上司や同僚、当事者からのヒアリングなどを行い、店舗内の支援体制について助言したり、また、必要なサポートを見きわめたうえで、障害者職業センターのジョブコーチや、そのほかの支援機関によるカウンセリングなどのサービスにつなげたりする役割をになっています」また、発達障害者や精神障害者への支援体制を強化するため、14人いる人事教育部のメンバーのうち1人は、看護師の資格を持っており、必要に応じて、ジョブコーチ支援やリワーク支援などの支援場面に立ち会ったり、当事者との定期的な面談などを行ったりしているそうです。「専門的な知識のあるメンバーはかぎられていますが、適切なタイミングで、適切な専門家につなぐことで、障害のある従業員の職場適応や定着の助けになっていると思います。当事者は、何か問題や不満を抱えていても、気持ちを言葉で表現するのがむずかしい場合がままあります。その人の状況や気持ちをすぐには理解できないこともありますが、できるかぎり寄り添った対応ができるように心がけています。最近は、障害者職業生活相談員資格認定講習を受けるメンバーもおり、人事教育部として、障害者雇用への理解をよりいっそう深め、採用している店舗のサポートをしていきたいと考えています」最後に、加藤さんは、これから障害者雇用に取り組む企業の方、初めて担当になる方などに向けて、次のように話してくれました。「障害のある人のことを理解しようと頭ではわかっていても、相手の立場や状況、気持ちなどを推し量り、本当の意味で理解することはなかなか困難なことです。でも、それをあきらめずに、理解しようという立場に立ち続けること、『自分の考えとは違うが、こういう考え方もあるのだな』と相手の考えを一度受け入れる頭のやわらかさが必要だと感じています。会社として『それは受け入れられない』、『実現不可能だ』と思う状況もあるかもしれませんが、はじめから『できない』と決めつけずに、どうすればできるのか、できることを一緒に探していく姿勢が大切だと感じています」当連載では職場内の支援体制について、4回にわたりその重要性とポイントや事例をご紹介してきました。どの企業もそれぞれの特徴、物理的な環境などに応じた工夫をしながら職場内の支援体制を整備して取り組んでいることがわかります。人事担当のみなさま、どのような体制で取り組むとよいか悩まれたら、お近くの地域障害者職業センター(※)にどうぞご相談ください。支援機関との連携と店舗の支援をになう『人事教育部』作業室で店頭に並べるいちごパックを準備している様子。店内放送なども担当し、売上向上の一助となっている (写真提供:株式会社ヤマザワ)※地域障害者職業センター https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html青果部門で25年間勤務している男性従業員。知的障害があり、おもに商品陳列を担当している(写真提供:株式会社ヤマザワ)「障害者職業生活相談員について」https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04.html山形市内にある、ヤマザワ松見町店(写真提供:株式会社ヤマザワ)働く広場 2023.217
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