「No Charity, but a Chanceが希望を持って目標に向けて取り組んでいます。清水B型からA型に移行するときには、標準的にどれぐらいの期間が必要ですか?早い人で1年で移行した人もいま福澤 すが、通常3年から5年ぐらいはかかります。移行した人たちを見ていると、"手本"が目の前にあることが大きな影響をおよぼしていると感じますね。目に見えないものではなく、「憧れの先輩たち」というモデルが目の前にあるのです。その存在により自律への気持ちを長く維持できることが、太陽の家の強みだと思っています。毎年3~4人がB型に入り、1~2人ぐらいがA型に移行します。先日、9年かけてA型に移行した人もいました。採用辞令をじっと眺めている目を見ると「これからだ」という強い決意を感じ、胸が熱くなりました。A型から公益事業への移行はどれ清水ぐらいかかりますか?福澤1年ぐらいですね。公益事業からデンソー太陽に入社することにも年数の制限は設けていません。1年に2回、7月1日と1月1日にステップアップのタイミングを設けています。「太陽の家はこの人を推薦します」、「デンソー太陽はこの人を採用したいです」という両方の希望をすり合わせ協議などを経て採用に至ります。清水 「ステップアップの仕組み」はやる気を引き出す素晴らしい仕組みですね。その仕組みでステップアップした人に対して、太陽の家としてはどのように支援をされていますか?福澤 太陽の家の本来の業務は障がいのある方の自律支援ですし、設立からの役割分担も相まって、支援や相談の役割は太陽の家がになってきました。数年前までは工場のフロアごとに担当の支援員・相談員を配置していましたが、デンソー太陽社長の大西さんの要望で、自分の「パートナー(支援員・相談員)」を社員が指名できるように変更しました。デンソー太陽の社員になるとうちの所属ではなくなりますが、太陽の家の支援が切れないように、社員になった後も気の合う職員をパートナーとして指名できるようにしています。そうすることで、社員はいろいろなことをパートナーに相談しやすくなります。職員は、何かあったときのために横で伴走しているようなイメージです。太陽の家から自律した人たちに「私のパートナーをお願いします」といわれることは、職員にとっても励みになっているようです。清水 最後に福澤さんにとって障がい者雇用の質とは?法定雇用率達成のためだけではな福澤 く、雇用方法や本人の活躍の仕方で社会が障がいのある人を受け入れていく仕組みや制度をつくる必要があると思っています。雇われる側は持っている能力に期待してほしいはずです。その期待に応えたいと思ってかんばるので、雇った側は、そのがんばりに感謝し、評価していく関係性が大事だと思います。折に触れ「共生社会の実現」と私も口にしますが、私たちはすでに共生しているわけで、その関係性の質をどのように高めていくのかということです。それはお互いに信頼し、必要としあうことではないでしょうか。支える側、支えてもらう側だと、早晩限界が来ると思います。障がいの有無にかかわらず、お互いの多様性を認めることが、障がい者雇用の質も高め、本当の意味での共生社会になると考えています。続いて、デンソー太陽の取締役社長を務める大お西に明あ彦ひさんにお話をうかがった。清水 社長を継承されて、最初に取り組まれたことは何ですか?大西 デンソー太陽では品質・生産性を重視した工場運営の仕組みはほぼできあがっていたのですが、太陽の家の理念機会を)」に則った経営がしっかりできているかチェックしました。デンソー太陽のことを「デンソーがつくった会社だ」と思っている人が多いので、そうではなくて、地元の熱意でつくったという経緯についてもあらためて回帰しました。清水 生産事業と障がい者の自律支援を両立させるために、どのようなご苦労をしきこお !(保護より大西さんにインタビュー「経営の質」「デンソー太陽株式会社」就労継続支援B型事業所の生産ライン「愛知太陽の家」の一室には、中村裕先生の写真や理念などが掲げられている働く広場 2023.224
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