働く広場2023年2月号
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るか理解したうえで、どういう組合わせでラインに配置するかを考えることが、すごくたいへんでしたね。人間関係を頭に入れながら、でも生産台数のことも考えなければならないし、いろいろ悩みました。清水 班員一人ひとりを理解していくにあたって、意識されたことはありますか?班員に声かけすることが増えま吉田 した。いままでただの作業者だったときは、同じ班員だからといって、そこまで深くかかわる必要はないと思っていました。しゃべらない人がいてもしゃべる人がいても、特に気にならなかったです。でも班長になってからは、なるべくみんなと話をして、いまこの人はこんなことを考えているのだなとか、この人はこういう趣向があるのだなとか、プライベートな話もしたりして、積極的にコミュニケーションを取るようにしました。実は私はもともとすごく人見知りなので、コミュニケーションはたいへんでした。入社当時はだれとも会話できなくて、ずっと一人でいるという感じでした。いまは自分の立場だからというのはもちろん、特に品質確保の観点からも、班員一人ひとりと誠実に向き合っています。清水 自分が作業をしていたときの品質に対する考え方と、ラインリーダーや班長になってからの品質に対する考え方はどう変化しましたか?吉田 自分が組付け作業者だったときは、とにかく不良品を見逃さないようにするのが主でした。ライン全般を見るようになってからは、どうすればみなが不良品を見逃さないようになるか、見落として流れていかないようにできるかなどをチェックしています。また作業者が、自分で不良品をつくってしまったことを素直に打ち明けられる環境を整えたいと思っています。不良品をつくった人には「後工程に流れるほうがもっと周りに迷惑をかけるから、すぐに打ち明けてね」と伝えています。一番大事なことは、自分がミスしたことをきちんといえることです。清水 吉田さんは後進を育てようと考えていますか?吉田 はい、後進を育てたいと思っています。ただ、プレッシャーを感じすぎて気持ちが沈んでしまうタイプの人は、身構えて「やらなければ」と追い詰められてしまうので、その点に気をつけて日々の指導にあたっています。清水 そういう思いやりや優しさが必要かもしれないですね。吉田さんを通してデンソー太陽のすばらしさが具体的にイメージできました。吉田さんにとって、働くこと、自律していくこととはどういうことですか?吉田 高校を卒業したら働くようにと母にいわれていたので、自分でもそれがあたり前だと思っていました。でも、自律していくことは、むずかしいです。自分が自律している実感もあまりないです。班長になったときも、自分ががんばったからというよりも、周りの班員に認められたおかげかなと思っています。だからいまは、自分の班は自分で守ると心に決めています。班員に何か起こったとしても、絶対に味方になってあげようと。甘えさせるわけではないですが、悪いことが起こったとしても、怒るけど敵ではないことをみなにわかってほしいと思っています。清水 謙虚ですね。班員にどう自律してほしいか、イメージはありますか?吉田 班員のなかには、たまに人間関係で不満をいう人もいます。私は仕事としてとらえてほしいという思いを伝えます。さまざまな考え方の人々が集う場ですので、相性にとらわれず、自分のなかで折り合いをつけて仕事はきちんとやってほしいと話しています。清水 最後に、これからの目標や夢はありますか?吉田 当社には1年間がんばった班に表彰状がもらえる制度があります。ここ最近は賞が取れていないので、それに向けてがんばっていきたいですね。私が班員につねに朝礼で「忙しいときも、不良品を出したときも、みなでがんばりましょう。みなで乗り越えよう」といってきたので、形に残るものとして表彰状がもらえると全員喜んでくれると思っています。清水 今日はいろいろとお話を聞かせていただきありがとうございました。吉田さんは、班員とのコミュニケーションを大切にしているデンソー太陽で生産される「スマートキー」デンソー太陽で生産される「センダ」27

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