働く広場2023年3月号
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自分が働く姿を想像しやすい職場支援担当社員が店舗を巡回 「田中さんは作業のムラがなく、任せた仕事をきちんとやり抜く姿に同僚のみなさんからも『見習わなくちゃいけないよね』との声を聞いています。ふだんから仕事の評価は高いのに、本人は控え目なのが前から気になり、アビリンピック挑戦をすすめてみました」そして田中さんは見事、地方アビリンピック埼玉大会で銀賞を受賞した。成瀬さんは「入賞して賞状をもらうことで大きな励みになりますよね。恥ずかしがり屋さんの田中さんも、日ごろの自分の仕事が評価されたと実感してくれているようです」と教えてくれた。ヤオコーでは本格的な障害者雇用を進めるにあたり、就労移行支援事業所や特別支援学校とのパイプをつくって採用活動を広げながら、すでに雇用している各店舗を回って課題や要望を聞きながら職場改善に努めてきた。従業員の採用は、本社で一括して行っている。地域の学校や事業所から実習希望があれば声がけしてもらい、本人の通いやすい店舗を決める。すむ進すさんが説明する。実習希望者を受け入れるかどうかの大きな目安は、①職場である売場において、コミュニケーションでお客さまに大きな迷惑をかけることはないか、②売場で必要なコミュニケーションなどが本人の心身に過剰な負担にならないか、だという。人事総務部の人事担当部長を務める鈴す木き 「実際は、もともとスーパーで働くことを意識して志望してくるからか、現場に出て大きな課題につまずくようなことはあまりありません。面接でも、ほとんどの人がスーパーで買い物をしたことがあると答えており、おそらく自分が働く姿を想像しやすいのだろうと思います。そこがほかの業種とは違う、働きやすさの一つなのかもしれませんね」実習は、年間延べ40店舗前後で実施している。1人1回あたり2~3週間を3回ほど行い、そこでマッチングが確認できれば採用につながるケースが多いそうだ。成瀬さんが説明する。 「採用手続きから入社後のフォローはもちろん、各店舗の従業員の人件費は各店舗の負担ですが、障害のある従業員の人件費は本社で負担します。各店舗ではパートナーさんの人件費もシビアですから、障害のある従業員はプラスアルファの戦力になると考え、最近は各店舗から『よい人はいませんか』と相談されるほどです」採用人数は年間20人弱にのぼる。入社後は、各自が抱える事情によって4時間~8時間のパートタイム勤務で、1年後から無期雇用に切り替わる仕組みだ。入社1年目の従業員については年2回、本社の支援担当社員3人が各店舗に赴いて面談を行っている。職場の上司から勤務状況を確認したうえで、本人から何か困っていることなどがないか聴き取っている。成瀬さんは「ここで課題が見つかった場合は、店舗側に指導することもありますし、就労支援機関や保護者に協力を求めることもあります」と話す。人事総務部で人事担当マネジャーを務める佐さ藤とかほりさんも、支援担当の一人として店舗を巡回しながら面談などを行っている。 「本人の顔つきや身だしなみ、生活習慣などを気に留めながらコミュニケーションを取るようにしています。そのなかで少 う     ず  8人事総務部人事担当部長の鈴木進さん働く広場 2023.3

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