働く広場2023年3月号
12/36

高次脳機能障害者の就職・復職等に係る自己理解の支援ポイント障害者の就職・復職等の支援において、本人が自己理解を深めていけるよう支援していくことは、職業生活への適応に向けて重要とされています。その一方で、高次脳機能障害者は、さまざまな背景により自らの障害やその影響について理解を深めることが困難な場合があります。就職・復職等の支援において自己理解に着目した支援が重要であることに違いはないですが、自己理解を深めることばかりにこだわってしまうと、障害者本人のメンタルヘルス上の問題につながってしまうなどのリスクもあります。そこで、高次脳機能障害者の就職・復職等の支援においてどのように自己理解を理解し、その支援のあり方をどのように考えていけばよいのかを整理することを目的に、インタビュー調査や文献調査を行いました。初めに、当機構の地域障害者職業センター等に配置されている障害者職業カウンセラーを対象としたグループインタビューを行い、就職・復職等の支援にたずさわる支援実務者が、高次脳機能障害者の自己理解をどのようにとらえて支援をしているのか、またその支援の過程でどのような困難を感じているのか、その実態を整理しました。次に、国内外の高次脳機能障害者の自己理解に関する文献調査を行い、高次脳機能障害者の自己理解をとらえるための概念や支援方法に関する知見を整理しました。そして、初めのグループインタビュー調査で明らかになった就職・復職等の支援における実態と、文献調査で整理した知見の一致するところや相互に補えるところに着目してこれらを統合し、支援仮説をつくりました。最後に、障害者職業カウンセラーを対象とし障害者職業総合センター 社会的支援部門た2回目のグループインタビューを行い、この支援仮説の内容についての妥当性や修正点についての意見集約を行い、これを基に支援仮説を修正しました。の自己理解をどのようにとらえ、どのように支援を選択していくことが望ましいのかを整理した「支援ポイント」をまとめました。の概要をご紹介します。(1)自己理解をとらえるための視点① ﹁自己理解﹂という言葉に含まれる多様な意味者が「自己理解」と表現している内容には、じつにさまざまな意味が含まれています。例えば、自身の特性についての知識(例:覚えることが苦手である)をさすこともあれば、その特性が及ぼす影響についての知識(例:覚えることが苦手なため、業務指示を忘れる場合がある)をさす場合や現実的予測(例:覚えることは苦手でも受障前に担当していた業務は問題なくできるはずだ)をさす場合もあります。これらは、「自己理解」と一言で表現される場合が多いと思われますが、それぞれ少しずつ違っています。         グと言い、この仕事がうまくできている・できしれませんが、現在行っている仕事ができているかどうか自分で評価する力(セルフモニタリンこのような過程を通して、高次脳機能障害者調査研究を通してまとめた「支援ポイント」就職・復職等の支援にたずさわっている担当また、一般的に意識されることは少ないかも1 調査研究の背景と目的2 研究の方法3 ﹁支援ポイント﹂の概要※1 Ownsworth,T.,Clare,L.,&Morris,R.(2006).AnintegratedbiopsychosocialapproachtounderstandingawarenessdeficitsinAlzheimer'sdiseaseandbraininjury.Neuropsychological Rehabilitation, 16, 415-438.を参考に作成。調査研究報告書No.162に記載した図を簡略化して示した。働く広場 2023.310

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る