働く広場2023年3月号
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ていないといった自己評価につながります)や、今現在行っている仕事がどれくらい自分でできそうなのか判断したうえで、必要なサポートや工夫(メモを取るなどの障害を補う方法の実践)を判断する力といった、課題(仕事)への適応力に影響するような力も自己理解を構成する一つの側面であるという知見があります。このように、自己理解にはさまざまな側面があることから、自己理解の問題を一括りにせずに、どの側面が課題になっていて、どの側面を深める必要があるのかという詳細なアセスメントが必要です。自己理解に影響する背景要因を考える自己理解に影響する背景要因はさまざまです(図)。例えば、受障して医療リハビリテーションを終えた直後の状況では、いくら受障前の仕事の経験が豊富であったとしても、障害が仕事にどのように影響するのか理解することはむずかしいでしょう。また、脳機能の受障によって、自分自身を客観的に見る能力が低下しているという場合も多く見受けられます。このような場合、やみくもに仕事の経験を重ねても、障害や障害の影響等に気づくということはむずかしいかもしれません。さらに、高次脳機能障害の自己理解の支援を行ううえで忘れてはならないのは、本人の心理的な受け入れがむずかしいということです。受障によって自分自身の能力に変化があったことを頭ではわかっていても、あまりにも急激な変化であるために無意識的に受け入れられないという状態に陥ることがあります。この場合、自己理解を深めさせようとするアプローチにより、ますます頑なになってしまうことが多く見受けられます。このように、自己理解を深めにくくする背景要因の違いにより、適切な支援のアプローチは異なります。したがって、背景要因を推察するためのアセスメントが重要になります。(2)支援方法の選択支援方法の選択は、ここまでに述べたようなアセスメントをふまえて行う必要があります。あわせて、次のような取組みを前提として行うことが重要です。①支援対象者との信頼関係を構築すること②自己理解を深めることそのものに着目するのこのような前提をふまえたうえで、①自己理本稿では「支援ポイント」の概要のみご紹介4 おわりに② ではなく、支援対象者が目標としていることや克服したいと思っていることに目を向けて支援すること③できていることや、できるようになったことに着目して、それを生かせるよう支援すること④家族、医療機関、仲間等との関わりを通じて理解を深められるようにすること⑤すぐに結果を出そうとするのではなく、長期的な視点をもって支援体制を整えていくこと⑥相談内容や支援内容は記録にとり、見える化して支援対象者と共有すること解を深めることに焦点をあてたアプローチを行っていくのか、②自己理解以外の部分に焦点をあててアプローチを行い結果的に自己理解を支援するのか(反復学習によって仕事に適応できるようにしていく、周囲の理解や関わり方を変えていく、受容的関わりやできていることに着目したアプローチにより自信をつけてもらえるようにする等)を、アセスメント結果に基づき判断していくことが重要です。     しましたが、調査研究報告書№162(※2)では、この根拠となる調査の内容や、もう少し詳しい「支援ポイント」の内容を記載しています。ぜひご覧ください。また、今回ご紹介した「支援ポイント」のみダウンロードすることもできます。あわせてご活用ください。●脳の損傷による直接的な影響●変化を認識するために必要な情報または機会の不足●障害を周囲に開示することで得るものより失うものが●障害やキャリアに対する社会の価値観生物学的要因大きいと感じられる環境や状況心理的要因「自己理解」社会環境的等の影響要因●心理的苦痛への対処(心理的否認)●受障前の性格図 自己理解に影響する背景要因(※1)※2 「調査研究報告書No.162」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku162.html◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)11働く広場 2023.3

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