働く広場2023年4月号
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■■林■一■茂■さん(35歳)は、そのビルメン堀江車輌電装株式会社(以下、「堀江車輌電装」)は、東京都千代田区の九段下に本社のある、鉄道車両の整備・改造を行う会社だ。自社内で障がい者雇用の好事例を生み出すだけでなく、社会に向けて障がい者支援事業を展開している。堀江車輌電装は、従業員数64人(2022〈令和4〉年9月1日時点)、1968(昭和43)年創業の会社で、鉄道車両の整備・改造事業を行う部署のほかに、ビルメンテナンス事業部、障がい者支援事業部、未来創造事業部を持つ。テナンス事業部と、障がい者支援事業部の部長を務める。今回は、この二つの事業部について、林さんと、同社で活躍する障がいのあるお二人に取材を行った。林さんは、「社会が抱えるさまざまな課題を解決しながら、働きたいと願うだれもが働ける社会をつくりたい」という、熱い想いを抱いている。林さんの支援スタイルは、障がい者雇用にかかわるさまざまな関係者(当事者、教育機関、支援機関、企業、家族)から悩みや課題を聞き取り、その課題解決に向けて、パートナーとしてともに取り組む、といったものだ。例えば、教育機関である大学との課題解決の取組みについて触れたい。林さんが大学のキャリアセンターにヒアリングに行くと、さまざまな課題を抱え、授業に参加できず単位が取れない学生や、就職活動がうまくいかない学生がいることを知った。そういった学生は障がいがあったり、いわゆるグレーゾーン(※)であることが多いと知り、就労へつなぐことを目的に、この課題解決に乗り出すことになる。学生の課題の根本には、次の3つのポイント(図)がうまくいっていないということがわかってきた。①健康・生活管理、②自己理解(障がいの見える化)、③自己決定(選択)、である。 「①健康・生活管理」では、大学によっては全学生を対象にセミナーを実施していたり、カリキュラムに取り入れている学校もある。障がい者支援事業部では、学生の健康と生活面についての課題を解決するため、独自のチェックシートを提供し、各項目5段階で自己評価を行えるようにした。このチェックシートには、発達障がいの傾向がある学生がつまずきやすいポイントを14項目抜粋してあり、企業が求めるレベルを4〜5点とした場合、3点以下の学生には課題意識を持ってもらうところがスタートだ。チェックシートの14項目には、体調不良時の対処、食事や起床、体力、金銭管理、身だしなみ、援助の要請、生活リズム、運動習慣などがあり、自分の課題を明らかにする。また、睡眠に課題を抱える学生が多いことから、同様に睡眠チェックシートも独自に作成。質問項目について「yes」と答えたものを1点とし、27点満点中13点以下は睡眠について課題があるとした。このように、自分の課題を見える化することで、相談をする大切さに気づいてもらい、行動を起こすことが重要だと林さんはいう。この取組みが、障がいのある学生にかぎらず、全学生を対象としているのは、自分の課題に気づいておらず堀江車輌電装株式会社社会全体に向けた「障がい者支援事業」POINT123(障がいの見える化)②自己理解①健康・生活管理①健康・生活管理②自己理解(障がいの見える化)③自己決定(選択)相互作用(選択)③自己決定   ■■       ビルメンテナンス事業部、障がい者支援事業部部長の林一茂さん★本誌では通常「障害」と表記しますが、平岡委員の意向により「障がい」としています※グレーゾーン:障害特性がみられるが、確定診断には至らない状態のこと堀江車輌電装は、鉄道車両の整備や改造を手がける(写真提供:堀江車輌電装株式会社)(資料提供:堀江車輌電装株式会社)図 3つのポイント働く広場 2023.4就職する為に必要な3つの要素あらゆる悩みや課題を徹底的に聞き取る課題解決に向けた具体的なアプローチを提示するだれもが活躍する社会づくりにつなげる21

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