働く広場2023年4月号
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支援を受けていない学生を見つけることができ、必要な支援につなげることができることを考えてのことである。次の「②自己理解(障がいの見える化)」については、障がい者支援事業部が実施する学生向けのセミナーのなかで、まず、将来自分にあった進路を納得して選択するため、また、必要な支援や配慮を得るために、十分な自己理解が重要だと伝えている。実際、企業での採用面接では自分の得意なことや苦手なことなどを伝える必要があるが、話すことが苦手であったり、経験不足などにより、面接で失敗することも多い。そのため、セミナー内ではペアワークを通じて自分の苦手を認識した後に、具体的な対応策として、相手に伝えるためのフレームワークや、数字を交えて話すことの大切さを伝え、「実際にやってみてうまくできた」という体験をする。三つめの「③自己決定(選択)」は、これまでの①と②ができている学生向けの最終ステップである。企業を知り、自分の働く道を決定していく。具体的な取組みとしては、企業とのマッ            実施している。就職の際、障がいをクローチングイベントや、合同企業セミナーをズにするのか、もしくは障がいをオープンにし、手帳を取得して一般枠で就職するのか、障がい者枠で就職するのか、もしくは福祉的就労をするのかという選択肢を提示したうえで自己決定していく。障がい者支援事業部では、このような取組みを大学側と連携して行っており、現在では10校のキャリアセンターと進めている。ただ、そこで終わらないのが林さんである。現在はその先の、企業と学生をつなぐ仕事も行っている。それが、障がいのある求職者向けの人材紹介事業だ。この事業では、求職者向けに模擬面接や履歴書の添削、インターンシップなどの訓練をし、求職者のレベルの底上げを図るとともに、家族ともコミュニケーションを重ね、価値観を共有し、信頼関係を築くことに時間をかけている。そして、一人ひとりにマッチした企業を紹介し、就労へつなげていくことで、定着率の高さにつながっている。「就職はゴールではなくあくまでスタート。働き続けることが何より大事だ」と林さんはいう。では、このように社会全体に向けた取組みを展開している林さんについて、あらためて紹介したい。社会人スタートは専門商社で、営業を2年半経験した。その後転職し、就労移行支援事業所・就労継続支援B型事業所(以下、「支援事業所」)の立ち上げを2年間経験し、堀江車輌電装に入社したのは2014(平成26)年だ。林さんの障がい者雇用の原点は、専門商社でのこと。新規開拓営業をする際、当時の上司から「日経新聞の記事でおもしろいと思った会社に新規営業をする」という指示があった。ある日、視覚障がいのある人が経営する会社の記事に目が留まった。実際に訪問し、話をしていくなかで、初めて障がいのある人のすばらしさに触れた。それまで林さんは障がいに対して偏見があり、「障がいのある人は支援される側の人」と勝手に認識していたという。しかし、自分の想像をはるかに超えた存在の障がい者と出会い、自分の世界観が大きく変化した。その人とはその後も接点を持ち続け、専門商社を退社した後、ともに支援事業所の立ち上げにかかわることになった。その支援事業所では、生活保護を受けている人や障がいのある人などさまざまな出会いがあった。働けるはずなのに働かない人、一方で、働きたいのに働けない人の存在を知り、不公平感を感じることもあったそうだ。そのため、福祉側から企業へ送り出す支援だけでなく「企業側として障がいのある人の受け入れまでやってみたい」と思うようになり、当時ご縁のあった堀江車輌電装への入社を決めた。鉄道車両のメンテナンス会社のなかに、障がい者支援事業部をつくったのは2014年。林さんはこれまでの経験を通じて、障がいのある人が、働きたい気持ち障がい者専門の人材紹介事業健康管理・日常生活管理能力チェックシート(資料提供:堀江車輌電装株式会社)働く広場 2023.422

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