働く広場2023年4月号
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はあるのに働く機会に恵まれないことや、企業の方針によっては、障がいのある人は一度就いた業務はなかなか変えてもらえないという「キャリア選択の狭さ」に課題を感じていた。 「想いはあっても最初からうまくいったわけではありません。『鉄道車両のメンテナンス会社がなぜ障がい者支援をしているのか』と理解してもらえず、なかなか協力を得られませんでした。でも、徐々に大学や企業、就労支援機関などとの接点が増え、コミュニケーションを取っていくなかで、それぞれの課題が少しずつ見えてきました。その課題の一つひとつに向き合い解決したい、という強い思いを持って歩んできました」と林さんはいう。 「そんななか、企業において障がい者雇用の担当者は孤立することが多いこともわかり、コミュニティーをつくる活動を進めていきました。そうするうち徐々に『堀江車輌電装の障がい者支援事業部は困りごとを解決してくれる、よい組織らしい』という声も聞こえてくるようになりました」と林さんはふり返った。常にさまざまな立場の方の不安を聴き、一緒に解決してきた8年だった。そんな林さんと私が出会ったのは、障がい者支援事業部主催の企業担当者を集めた事例検討会だ。そこでは各社担当者をつなぎ、悩みや課題を打ち明け、成功事例や失敗事例を共有する機会を提供してくれる。他社事例を知ることは企業担当者にとって非常に重要な機会である。そのまま真似することはできなくても、他社事例のなかで取り組めそうなものを自社に展開するサイクルを演出してくれる。年に4回開催され、1回に30〜40人の企業担当者や就労支援者、学校の先生などが集う会となっている。これは、障がい者支援事業部の企業サポートの一例である。現在はリモート開催だが、いつも画面越しに林さんの「みなさんの役に立ちたい。課題を解決できないか」といった思いが伝わる。何より笑顔の林さんがいて、なんだか楽しそうなのだ。ざっくばらんに企業担当者をつなぎ、何でも話しやすい雰囲気ができあがる。障がい者雇用支援に使命感を持ち、楽しみながら行っているように見える。それが林さんなのだ。次に、堀江車輌電装で活躍する二人の障がい者スタッフに話をうかがった。まず、一人目は森■下■慶■祐■さん(35歳)。  ■■■■    顔で私たちを迎え入れてくれた。森下さん取材で会社におじゃますると、林さんの一歩後ろで森下さんが少しはにかんだ笑は26歳のときに統合失調症を発症、半年の入院を経て就労移行支援事業所で訓練を行い、29歳で堀江車輌電装へ入社した。現在6年目だ。現在は、ビルメンテナンス事業部での清掃業務に加え、障がい者支援事業部で、清掃業務のジョブコーチとしての役割もになっている。これまでの経緯について話してくれた。 「自分は、26歳で統合失調症を発症し、入院していた半年間は希望がまったく持てませんでした。退院する際、医師や看護師のみなさんに『これからはいいことしかないよ!』と励ましの言葉をいただきましたが、そのときは『そんなわけない』と喜べませんでした。病状も重かったし、社会復帰できるかもわからなかったので、素直に受け取れませんでした。でもいまは、これまでいろいろ苦労はあったけど、がんばってきてよかったと感じています」と、清々しい表情で話してくれた。 「就労移行支援事業所では、事務の訓練が多かったので、将来は事務の仕事に就くしかないと思い込んでいました。でも、自分には手の震えがありましたし、社会人経験がなかったので、事務職が自分に向いているのかわかりませんでした。事業所の紹介で堀江車輌電装を知り、清掃という業務もあることを知りました。一方、これからの人生でずっと清掃業務をすることに何となく不安はありましたが、まずはやってみようと入社を決めました」「心を突き動かされるものがあった」活躍する障がい者スタッフビルメンテナンス事業部の森下慶祐さんコミュニティーづくりに活用されるチラシ(写真提供:堀江車輌電装株式会社)働く広場 2023.423

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