働く広場2023年4月号
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当機構では、毎年、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。第30回となる今年度は、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案し、開催規模を縮小したうえで開催するとともに、その様子をリアルタイムで配信して視聴いただける形式をとりました。また、その内容を広く発信するために、昨年度に引き続き、当機構障害者職業総合センター(NIVR)ホームページへの動画掲載も行っています(★)。ここでは、東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野・教授の近こ藤ど武た夫お氏による特別講演「障害や難病等のある人々の多様な働き方の現在地~超短時間での新しい働き方、テクノロジー活用、教育段階から労働社会への移行を例に~」をダイジェストで紹介します。私の所属する東京大学先端科学技術研究センターでは、自治体や企業、地域と連携して、一般的な雇用や障害者雇用では働くことがむずか けんう     しい人々を企業での雇用につなげる「超短時間雇用プロジェクト」を行っています。日本の総人口(※1)における障害のある人の割合は約7%(※2)となりますが、これは、18~64歳の労働者人口(※3)に対する障害者の割合の0・7%(※4)とは大きな乖離があり、障害者の雇用政策は進んでいるものの、一般企業に就労している障害者は限られている状況がうかがえます。その背景には、「長時間働く必要がある」、「採用時に職務定義がない」という日本型雇用の通例が、障害のある人たちにとって、厚い壁となっているものだと考えられます。例えば、日本の一般企業では、健常者なら週に40時間、障害者雇用でも週に20~30時間以上、年間12カ月を通じて働くことが求められます。そのため、障害のある人に限らず、子育て、介護、高齢などで長時間、長期間働けない人は雇用対象になりにくいという問題が生じています。また、一般的に、採用時には職務の定義がなく、暗黙のうちに「臨機応変になんでもできる人」が期待されます。その結果、特定分野で何かできることがあったとしても、障害や疾患などによってできないことがあると、労働社会から排除されやすい状況があります。した雇用モデルが、「超短時間雇用モデル」です。次のような6つの要件を定義して、既存の障害者雇用の仕組みでは働くことのできない人たちを、一般企業での雇用につなげて力を発揮してもらっています。体的に洗い出し、それができる人を採用します。例えば、「この部分をだれかに手伝ってもらえれば、優先度の高いほかの業務にもっと集中できるのに」、「この時間に、この業務だけ手伝ってもらえれば助かるのに」といった内容に対し、その業務を遂行できる力のある人を結びつけて、週に数時間などの超短時間の勤務時間でも働くことを可能にする仕組みとしています。その状況を打開するために、産学連携で開発その企業の業務のなかで困っていることを具長時間働けない人が働きにくい日本の雇用システム﹁超短時間雇用モデル﹂を実現する6つの要件Part1第30回職業リハビリテーション研究・実践発表会~超短時間での新しい働き方、テクノロジー活用、【超短時間雇用モデルの要件①】採用前に、職務内容を明確に定義しておく【超短時間雇用モデルの要件②】定義された特定の職務で、超短時間から働く【超短時間雇用モデルの要件③】職務遂行に本質的に必要なこと以外は求めない特別講演﹁障害や難病等のある人々の教育段階から労働社会への移行を例に~﹂多様な働き方の現在地東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野・教授近藤武夫氏(※1)1億2577万人(総務省統計局「令和2年11月1日現在人口推計」より)(※2)937万人(厚生労働省「平成30年版厚生労働白書」より)(※3)約7,130万人(総務省統計局「平成28年10月1日現在人口推計」の18~64歳人口から、講演者が労働白書を参考にして独自に算出した失業者数を除いた人数)(※4)49.6万人(従業員45.5名以上の企業で雇用されている障害者)(厚生労働省「労働政策審議会障害者雇用分科会 第83回資料」より)特別講演の様子働く広場 2023.428

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