働く広場2023年4月号
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を経て2019年に入社した。面接では、人とのコミュニケーションが苦手なことから配慮を依頼したそうだ。 「会社のシャトルバスも苦手なので、主治医や上司と相談して一般バス通勤に変更させてもらいました。早めに着くので、ゆっくり始業準備もできます」職場では、調子が悪くなっても薬を服用すれば30分ほどで持ち直せるが、深刻な場合は休憩室で深呼吸をする時間をとらせてもらっている。生産課の課長を務める井い口ぐ倫と一いさんたちが、適度な距離感で見守ってくれるのもありがたいようだ。田野口さんは「私の様子を見て、あえて声をかけなかったり、逆にしっかり指導してくれたり、ときに冗談をいってくれたりして、心地よい職場環境です。自分でも体調維持に努め、ずっと働き続けていきたいです」と話す。休日にはモトクロスを楽しみながらリフレッシュしているそうだ。少し離れた場所では、生産課包装グループの津つ田だ晋し太た郎ろさん(47歳)が部品の袋詰め作業をしていた。以前は大手電機メーカーの関連会社で検査業務をしていたが職場の県外移転にともない退職、ハローワークの紹介でエスポアール設立時の1994年に入社した。手先の器用さを評価され、いまは数種類の部品梱包も任されているベテランの一人。指導員らは「部品を見てすぐに箱を選び出し、何もいわなくても作業を進めてくれます。折り方を間違えると破損しやすい箱も、彼は素早く正確に組み立てられます」と信頼を寄せる。ちなみに津田さんは小学校5年生のころから家族と登山を続けているそうで、日本百名山の踏破を目ざすほどの健脚だ。生産課では2019年に「廃トナーボトル」の組立業務を開始した。廃トナーボトルは複写機のなかに組み込まれていて、印刷するたびに余分に出るトナーを集める部品だ。 「新規事業は、いつも準備に2年ほどかかります」と小池さん。まずエスポアールの指導員が業務内容を覚え、リコー社内試験として一定期間、指導員がやってみてエラーを出さないことを示し、初めて生産許可が下りる。そこから新規採用や実習などを経て業務がスタートする流れだ。ょう堀ぼ亮りさん(29歳)が黙々と作業台でシー立ち上げにかかわった井口さんは、障がいのある従業員が取り組みやすいようマニュアルや治じ具ぐなどを考案していった。 「言葉よりも写真が理解しやすいので、現場のあちこちに作業の写真を掲示しました。廃トナーボトルの表面にシールを貼るときに『面の真ん中』が理解できないと従業員から指摘され、薄い板をくりぬいて確実に同じ位置に貼れる治具を手づくりしました」業務が始まってからは「日々、品質と効率と安全をいかに維持していくかに目を配ってきました。つまずいたときも彼らにとっての理由があるので、そこを理解したうえで対策を考えています」と井口さんは話す。現場では、生産課組立てグループの野のル貼りや機械による確認作業をしていた。野堀さんは、以前働いていた会社の職場環境が合わなかったことから、あらためて就労移行支援事業所に通い2017年に入社したそうだ。最初はオフィス業務課で廃棄物回収を担当していたが、そこで知り合った女性従業員との結婚を機に異動してきた。「生産現場にかかわり、やりがいもあります。子どもが生まれたので、新規業務は2年かけて準備うん り   もちち    6廃トナーボトルに部品を取りつける野堀さん生産課組立てグループの野堀亮さん津田さんは部品の袋詰めも担当する生産課包装グループの津田晋太郎さん生産課課長の井口倫一さん働く広場 2023.4

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