働く広場2023年5月号
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和歌山県和歌山市に本社、工場を構える株式会社山ノ木は、オーダー家具の設計や制作、施工を行っている。制作にたずさわる社員は6人。そのうち2人の聴覚障害のある社員が、大きな戦力となって働いている。取材に訪れたこの日は、飲食店のカウンターの制作中で、山原耕一さん(50歳)と堀健次さん(40歳)が協力しあいながら、カウンター上部に化粧板を取りつける作業を行っていた。山原さんと堀さんは、ともに「一級家具製作技能士」の資格を持つ腕利きの職人だ。カウンターは美しい仕上がりが求められるため、職人の技が光る。2人は、手話で打ち合わせを行いながらテンポよく作業を進めていた。ほかの社員とは、手振りや筆談などでコミュニケーションを取る。職人同士の共通認識もあり、簡単な用件であれば身振り手振りで意思疎通ができるそうだ。また、1週間の作業工程表や連絡事項を文書にすることで、伝達事項を正確に伝える工夫がなされている。カウンターの作業が一段落着くと、2人はそれぞれ別の作業に取りかかった。山原さんは大型の電動工具を使用して板材から必要な寸法の部材を切り出していく。音が聞こえないため、電動工具の異常に気づきにくいが、目視や振動に注意を払うことで、これまでにけがや事故はないという。一方、堀さんは、幼稚園からオーダーされた本棚の制作。手づくりした治じ具ぐを活用し、作業を素早く正確に進めていた。オーダー家具や什器は、注文にしたがってつくるため、ていねいな仕事はもちろん、納期に間に合わせるため仕事の速さも求められるのだ。2人はさらに経験を積み重ね、職人の高みを目ざす。働く広場 2023.5昇降盤という電動工具で板材を切断する。慎重に作業を進める寸法を測り、印をつける。ロスを少なくするのも職人の技だ図面を検討する山原さんオーダーにしたがい、必要な部材を書き出す    17

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