働く広場2023年5月号
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さわっておられる。まさにご自身が「教育・研究・人材育成」を具現化されているような方だ。德永先生は、生徒が卒業後も続く「ライフ・キャリア」を強く生きるために、「心・技・体」は欠かせないとおっしゃる。「特別支援教育は、キャリア形成の基本になると思います。卒業後の就職をできるかぎりスムーズに実現し、学生がその後のキャリアを広め、豊かな人生を送ってほしいと願っています」。続けてそうおっしゃる先生は、筑波大学大学院で生涯発達科学の博士号を取得されており、「人は人生をかけて発達する」という生涯発達科学の知見を教育の現場に活かすべく、日々、この「教育・研究・人材育成」に奮闘されている。ここ数年、特に教員の長時間勤務が問題視されている。校長としての管理業務のほかに、研究、そして横浜国立大学教育学部の学校教員養成課程(特別支援教育)で授業をされている德永先生も例外ではないだろう。 「校長先生も長時間勤務状態でさぞかしたいへんだと思います。吉岡先生のような進路指導教員も、さらに多ければ、職場実習なども手厚くなるのでしょうか」とたずねた。德永先生は柔らかな笑顔で、「教員数だけの問題ではないかもしれませんね。吉岡先生のように質が高い先生が多くいるというわけでもないでしょうし。進路指導教員の研修も大切です」と、「人材育成」の課題についても触れてくださった。そして、「すみません、本当はもう少しお話をしたいところなのですが、実はこれから大学で授業がありまして、私はここで失礼しなければなりません。このあとは、進路指導担当の吉岡先生にご案内をしていただきます」といわれ、横国・特支から1時間近く離れた場所にある横浜国立大学に、たくさんのお荷物を背負って出かけられた。その後ろ姿を見つめながら、「どうかお体を大切になさってください」と心の中で祈った。折しも、取材当日の朝日新聞朝刊には「教員残業代なし しで、働いても働いても残業代がつかない「定額働かせ放題」の問題が取りあげられていた。公立学校教員の「教員給与特措法」(給特法)の扱いが問題になっており、例えば、文部科学省の2016(平成28)年度「教員勤務実態調査」によると、公立学校教員の平均残業時間(時間外勤務)は、小学校が月約59時間、中学校が約81時間と推定されているという。ちなみに、1966年の同様の調査では残業時間は8時間と推定され、この8時間分の超過勤務を基本給の4%として上乗せし、これを「教職調整額」として給与の一部としているのが現状という記事である。しかし、60年前の基準では現状に見合わない。現在の残業時間は当時の7〜10倍になっているのだ。私は取材当日の朝、電車の中でこうした記事を読み危機感」という見出①人間関係形成能力を育む言語活動−・人間関係形成能力を育む言語活動に②特別支援学校(知的障害)における「社・地域外部資源等を活用した授業・単・本人参加の視点に基づく授業の改善・社会に開かれた教育課程に向けた指③知的障害のある児童生徒の“魅力”デながら移動したこともあって、横国・特支は公立学校ではないが、德永校長をはじめ、ほかの先生方の勤務状態はどうなのだろうと心配しながら「取材」をさせていただいた。特別支援学校教員の職場ストレスと健康状態は、教育の質にも影響をおよぼす可能性があるからだ。そのような実態調査研究もあると思うが、それはさておき、横国・特支のなかで行われている研究は、いわゆる教育研究・授業研究が主体であり、非常に豊富である。德永校長だけでなく、すべての教員がかかわる教育研究・授業研究を継続的に実施されている。これまでの研究課題の一部を以下に示す。キャリア教育の視点から−(2014〜2016年)ついて、本校の取り組みの整理と授業研究会に開かれた教育課程」に向けて−自立と社会参加を図る授業づくりをもと元の構想導事例の蓄積と整理に−(2017〜2018年)働く広場 2023.5中学部「はたらく」の授業(写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校)案内していただいた吉岡先生(左)と授業の様子を見学する八重田淳委員(右)       22

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