働く広場2023年5月号
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中学部では、「総合的な学習の時間」として「はたらく」という学習内容を設定し、「進路およびキャリア形成に関する学習」として位置づけられている。授業風景を見学させていただいたときも、キャリアに関する内容のお話をされていた。高等部では、教育課程に新しく「キャリア」の授業が2022年に新設された。この授業は、高等部の授業として、週5コマある。したがって、生徒はこの仕事に特化された授業を通して、「定時にはたらく」ことの意味を知ることができる。「キャリア」の授業を毎日受けることは、「労働の習慣化」にもなるので、有効だと思う。さらに、ある企業から受けた実際の作業は、こうした授業で体験することができる。職業教育と職業訓練の一環として有効だろう。作業報酬は発生しないが、実際の企業の製品を間違いなくつくることで、学内でOJTに近いことを実現できているようだ。横浜国立大学内のコンビニエンスストアや食堂で行われる職業実習(詳細は次に説明)とあわせて、高等部の学生、特に3年生にとって、「キャリア」の授業は大切な時間となっているはずだ。さらに、高等部における単元学習の一つに、SDGsをテーマとした「国際協働学習」がある。いまの時代に合ったテーマの教育を提供しているのも特筆すべき点である。具体的には、フランスの学校との交流実績もあるそうで、壁画の共同制作などを行っているそうだ。オンライン教育の場で、相互に報告会を行うなど、先駆的な取組みといえる。また、高等部では、就職後にも大切な「自己理解」に関する教育も行っている。自身の力量と特性を理解し、自分らしく働けるようになるためにも、自己理解の促進は大切な教育目標の一つである。進路学習の内容として、それぞれの学年で大きなテーマがある。1年次に「知る」、2年次に「やってみる」、3年次に「決める」という学習課題だ。1年次では、企業の職場見学を行っている。特徴的なのは、グループでのインターンシップであり、これは附属学校の強みともいえる。前述したように、横国・特支はその本校である横浜国立大学での職業実習を効果的に取り入れている。実習は5日間で、大学の校内清掃、広報、事務、食堂などの職場で、まずは見学実習を行っている。2年次には、進路の選択肢として福祉事業所もあるため、就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所などの職場見学を行う。基幹相談支援センターなど、自分が実際に利用できる機関の学習も含まれているようだ。見学させていただいた授業中も、学生は基幹相談支援センターや就労系事業所について学習していた。横浜国立大学での職業実習は2年次にも実施するが、個人単位では、企業実習期間は5日とのことであった。3年次には、生徒が実際に自分で選んだ実習先で1〜2週間実習を行う。そして進路指導教員は担任と連携を取り、学生が自分の力を把握し、その力を職場で試しながら、自身に合った就職先を焦らず選べるように支援している。この企業実習先が実質的には卒業後の就職先となっているとのことであった。学生が卒業後の進路選択について幅広        く学習できるよう、企業や就労系事業所のパンフレットや、働くことに関する豊富な書籍を自由に閲覧できる進路資料室高等部の進路学習働く広場 2023.5中学部の「職場見学」。社員として働く卒業生から説明を受ける(写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校)高等部「職業」の授業内での検品作業。実際に販売される商品の検品を行う横浜国立大学における職業実習(インターンシップ)。大学図書館での清掃作業(写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校)(写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校)24

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