働く広場2023年5月号
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Coordinatorもご案内いただいた。現在、この資料室をさらに使いやすくするための準備を進めているとのことであった。学校は基本的に卒業後の3年間は、生徒のフォローアップを行っており、必要に応じて相談支援機関や就労支援機関と連携を取り、「支援の主体」の移行を果たしている。同窓会「ふようコスモス」では、卒業生の余暇支援を行っている。これは卒業生の保護者が中心となって実施している。年4回青年教室を開き、月1〜2回の愛好会活動を実施し、余暇支援と同時に卒業生の現況確認が行えるため、効率的である。 「キャリア」とは職業生活を含む「人生航路」を意味する。人生のなかで、余暇を楽しく有意義に過ごすことは、職業人としてもきわめて大切だ。知的障害のある労働者本人が、「働きながらも余暇を楽しんでいるか」という確認もできる。このアフターフォローのためにも、同窓会の存在は大切である。今回、私は「教員」の一人として、横国・特支を見学させていただいた。教員は、小学校であれ、大学であれ、授業準備に膨大な時間を要する。授業の事前事後にかかる時間は、実際に教える時間のもちろん、これには個人差があると思う。授業前に教材を作成し、授業計画を練り、該当する参考資料を古いものから最新のものまで調べ、その内容を学生にわかりやすく興味深く教え、さまざまな相談に乗り、最後はきちんと評価するという仕事だ。これを徹底的にやろうとすると、帰宅してからも、つい仕事をしてしまう。少しでもよい授業を行おうとしても「完璧な授業」などないので、教員の仕事は「終わりがない」とよくいわれる。毎回最高の「ライブ・パフォーマンス」を「ライブ授業」でやろうとして躍起になって準備していると、作業量ばかり増え、数時間があっという間に過ぎ、教育者として本来持つべき「教える喜びや楽しさ」を忘れてしまいがちになる。本稿の冒頭で教員の長時間労働の問題に触れたが、長時間労働にならざるを得ない理由の一つは、この授業準備であることは間違いない。今回、特別支援学校における進路指導について取材を実施したわけだが、同じ教員目線で、先生方と職員の方々の働き方を垣間見ると、そのたいへんさはひしひしと伝わってくる。昔(1984年)の話で恐縮だが、私が「特別支援教育」を院生として学んでいたころは楽しかった。知的障害のある特別支援学校の学生と一緒に泳ぎ、歌い、遊んだ。知的障害のある方向けの職業リハビリテーション生活施設で一緒に食事をつくり、踊りに出かけ、パーティを企画するといったレクリエーションを担当した。また、アメリカで制度化され始めたころのジョブコーチとしての援助つき雇用による就労支援も、現在の日本の就労継続支援B型事業所のようなところで行った。そのとき、職業リハビリテーションには、働くこと以外に「余暇」の充実がとても大切だと思った。どうせ働くなら「活き活き」と「楽しく」働きたい。これはだれしも同じなのではないだろうか。今回、横国・特支の学生が真剣に学ぶ目の強さ、奮闘する教員の授業内容が「わかった!」と喜んだときの学生の笑顔、その笑顔の一瞬を掴んだときの教員の凛とした表情を見て、特別支援教育のよさを肌で感じた。また、ほぼ毎日を学外で職場開拓・作業実習・企業と施設と支援機関間の連携に奔走している進路指導教員(吉岡先生)の「マーケティング担当」を彷彿させる力量の一端を拝見し、学校から職場への移行スペシャリスト(アメリカでは、Transition要性を再認識することができた。最後に、誌面をお借りして、あらため        て横浜国立大学教育学部附属特別支援学校の先生方と学生さんに感謝し、敬意を表します。どうもありがとうございました。)の重卒業生への支援おわりに働く広場 2023.5資料を手に取る八重田委員進路資料室の一角10倍以上を要することが少なくない。25

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