働く広場2023年5月号
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POINT123繊維機械など業務拡大にスタッフ奔走ille石川県金沢市に本社を置く「津つ田だ駒こ工業株式会社」(以下、「津田駒工業」)は、1909(明治42)年創業の繊維機械(織機)・工作用機器メーカー。県内3カ所に工場があり、織機の超高速ジェットルームなどを60カ国以上に輸出している。従業員数は約840人だ。津田駒工業が2011(平成23)年4月に設立し、同月に特例子会社として認定された「ふぁみーゆツダコマ株式会社」(以下、「ふぁみーゆツダコマ」)は、フランス語のFam(ファミーユ:家族)から名づけられた。親会社からの出向スタッフ3人を含めた全17人のうち、障害のある社員は12人(身体障害2人、知的障害障害者雇用率は2・83%(2022︿令和4﹀年6月1日現在)だという。事務系作業にかかわる「庶務グループ」5   りず   ましき まきしろと、機械組立系作業にかかわる「作業グループ」があり、特に親会社の工場生産にかかわる請負業務で作業グループが手がけるものは、製造ライン用ボルトなどのピッキングから繊維機械の構成部品(ASSY:アッセンブリー)組立まで、57種類ほどがある。親会社と同じ敷地内にある職場での作業の様子や工夫、多能工化を含めた人材育成の取組みなどを紹介していきたい。ふぁみーゆツダコマの設立準備には2年ほどかけたという。地域の特別支援学校と連携し、2年生からの実習生の受け入れを始めて採用につなげてきた。設立時に親会社から出向し、現在は業務課長を務める鈴す木き紀の子こさんが説明する。 「最初は図面の電子化といった作業が中心でしたが、当時の現場グループ長が、地道に取り組む実習生の様子を見て『製造にかかわる作業もできるかもしれない』と試みたところ、予想以上の結果でした。そこで簡単な部品組立から始め、徐々に業務の幅を広げてきました」委託元は、ほとんどが親会社の本社工場だ。業務開拓に奔走してきたのは、40年の本社工場勤務後に転籍してきたシニアスタッフの崎さ喜よ博ひさんと、2015年から出向し、作業グループ長を務めている山や田だ嘉よ幸ゆさんだ。崎さんは「障害のある社員たちのキャパシティと、工場側の生産台数の波を見ながら、『この作業ならできます』と打診したり、いったん試して検証させてもらったりして少しずつ業務を増やしてきました」という。山田さんも、親会社の部品組立部門での経験や人脈を活かしつつ「多少の危険をともなう業務でも、障害のある社員が安全に作業できるようさまざまな改善工夫をしています」と話す。現場で数多くの治じ具ぐも手づくりしてきた崎さんは、職場の「よきおじいちゃん」的存在として、障害のある社員たちの相談相手も務めている。「親会社にいたときは、どの部下も同じように教えていましたが、ここでは、一人ひとりに合った指導や作業手順などが必要だと気づきまし働く広場 2023.5ふぁみーゆツダコマ株式会社の作業エリア業務課長の鈴木紀子さんシニアスタッフの崎喜博さん作業グループ長の山田嘉幸さん10人)、親会社の津田駒工業と合わせた60カ国以上に輸出年1回程度の作業ローテーションで多能工化を図るメモリーノートや不良防止活動などで、不良件数は年間10件未満に週報や社内イベントを通して家族とのつながりも

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