働く広場2023年5月号
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わきかか –  ずか   きおろか かお7それぞれ一人で作業年前から始めた「集中給油チューブASSY」の組立作業だ。以前はチューブのカットと潤滑油を入れこむ作業だけを請け負い、その間に行う組立作業は本社工場の社員が行っていた。あるときその社員が定年退職することになったことから、ふぁみーゆツダコマに白羽の矢が立った。課題は、複雑な組立作業や仕様を、どのように障害のある社員に覚えてもらうかだった。山田さんたちは作業を二つに分解し、細かい仕様が書きこまれていた図面イラストを簡略化して作業場に掲示した。崎さんは「チューブを束ねる順番を決めるなど、ちょっとしたルールをつくることでチューブ選びの間違いを防いでいます」と説明する。この組立作業を請け負うことで、本社工場での新たな人員確保や部品運搬の往復が必要なくなるなど、WinWinの結果になったという。作業を担当する社員は現在3人。この日は入社11年目の岩い中な貴た幸ゆさん(29歳)が黙々と作業していた。織機の仕様によって接合場所が異なる十数本のチューブを、数本ずつ束ねながら完成させていく。岩中さんは、「これは簡単なほうで、もっと複雑に入り組んだASSYもあります。間違えないよう束ねる順番を工夫しています」と説明する。これまでいくつもの作業を担当してきた岩中さんは、「仕事はすぐに覚えられるけれど、すぐに忘れてしまいます。注意されたことはメモを取るようにしています」と話す。今後の目標について「新しい社員が入ってきたとき、先輩として何でも教えられるような存在になりたいです」と話してくれた。ほかにもこの日、作業グループで仕事に打ち込んでいた障害のある社員の様子を紹介したい。入社12年目になる朴ほ木の隆た浩ひさん(32歳)は、この日は「沈みプラグ」と呼ばれる小さな部品にシールテープをすき間なく重ならないよう器用に巻きつけていた。崎さんによると朴木さんは、根気があって同じ作業をずっとやり続けることが得意だそうだ。朴木さんは「むずかしい作業は覚えるのに時間がかかるので、スタッフの人たちに相談しながらやっています」と話す。一方で、背後にあったチューブを束ねやすくした治具を指さして「自分が改善提案しました」と教えてくれた。生きさん(19歳)は、特別支援学校在籍中趣味はギターだそうだ。立ちながらチューブのカット作業をしていたのは、入社7年目の鈴す木き明あ里りさん(25歳)。業務課長の鈴木紀子さんの娘さんでもある。紀子さんは、「明里だけ特別にならないよう気をつけてきました。朝は一緒に車で自宅を出ますが、彼女は途中で降りて電車通勤をしています。職場では私のことは『鈴木さん』と呼び、課長と社員の関係です」と話す。一方の明里さんは、母親と同じ職場であることについて「安心します」と明かす。同僚から親子関係についていわれることもないそうで、「毎日できる仕事を一生懸命にやっていきたいです」と教えてくれた。2022年に入社したばかりの田た中な尚なの実習で「先輩たちがやさしかったので、入社を志望しました」という。いま担当しているのは、金属製のワッシャーにネジとナットをセットする作業で、近くの棚に並んだ箱から英数字9桁ほどの型番がついたナットなどを選び出してくる。「型番を間違えないことが重要ですが、まだ間違えたことはありません」と話す田中さんは、「今後はいろんな作業に慣れていきたい」と抱負を語ってくれた。働く広場 2023.5簡略化した図面イラスト。チューブを束ねる位置が図解されている自動切断機を使ってチューブをカットする鈴木さん作業グループの鈴木明里さん沈みプラグにシールテープを巻きつける朴木さん作業グループの朴木隆浩さん

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