働く広場2023年6月号
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「歯科技工」中川直樹さん「家具(基礎)」深見尚生さん「ネイリスト」山下加代さん見事な職人技を発揮していた。専門的な器具やオーブンを使い、指定された数種類のパン(伝統的なパン、無農薬パン、装飾パン、菓子パンなど)を製作する。課題内容を教えてくれたフランス人ベーカリーシェフは昔、東京の有名ベーカリー店で働いていたそうだ。「日本が大好きです。この競技に日本人選手が参加していないのがとても残念です。ぜひ次回は挑戦してください」とラブコールを送ってくれた。レストランでのテーブルセッティングやカクテルづくり、デザートなどの提供を通してていねいで適切な接客サービスを行う。高級フランス料理店を思わせる場所で、工夫を凝らしたナプキン折り、皿やグラスの的確な準備や置き方、テーマ(この日は「コスモポリタン」)に沿ったカクテルづくりやデザート提供なども競う。出場選手にも話を聞いた。エクアドル代表の男性(20歳)は、大学でガストロノミー(食文化)を専攻しているそうだ。競技後、「僕のつくったカクテルの感想を聞かせて」と試飲をすすめられ、「おいしいよ!」と感想を伝えると、同行していた母親と一緒に晴れやかな笑顔を見せていた。フランス代表の女性(27歳)は普段から、ESATと呼ばれる福祉的就労支援機関で飲食サービスにたずさわる。「7年ほどこの仕事をしています。今回の競技はまあまあの出来でした」と苦笑いしていたが、銀賞を受賞した。このほかにも台湾と韓国の選手が競っていた「かご製作」や、巨大なダミーの3段ケーキをアイシングなどで飾りつける「ケーキデコレーション」、野菜やフルーツを使った「カービング」、個別のケーキやチョコレート作品をつくる「パティスリー・製菓」などもあった。2日間の競技が無事終了し、25日(土)の夕方からは閉会式が行われた。式典ではフランス人でつくる和太鼓チームが勇壮なパフォーマンスを披露。そしていよいよ成績発表。名前が呼ばれるたびに会場は拍手と声援で盛り上がった。日本選手団は金1個・銀4個・銅3個を獲得。最後に、大会旗が国際アビリンピック連合の輪島会長へと返還された。閉会式の前後には、会場フロアに各国の選手たちが入り混じり、同じ競技で競った選手同士で記念写真を撮ったり、SNSのアドレス交換をしたり、抱き合いながらあらためて健闘をたたえ合う姿が見られた。たった2日間の競技だが、選手たちにとっては人生の宝物になるかもしれない友情があちこちで生まれていたようだった。今大会も、国際大会ならではのさまざまなハプニングはあったが、最後まであきらめることなく、それぞれに力を出し切った日本人選手たち。翌日パリへ戻り、セーヌ河に浮かぶクルーズ船上で行われた解団式では、選手や介助者、医療従事者、手話通訳者ら関係者全員に、大会組織側から参加賞として発行された表彰状が手渡され、労をねぎらい合った。翌日、復路13時間の飛行機で羽田空港に向かい、帰国の途についた。 「世界一を手にすることができ、夢のようです。みなさんの応援や支えがあったからこその受賞だと思います。また、大会を通して出会いもありました。各地の、耳が聴こえない方たちと手話で交流し、視野が広がりました。今後も、さらなる高みを目ざして精進していきます」 「道具で苦労しましたが、最後まであきらめずにがんばってよかったです。今後も技術を磨きながら、ほかの競技にも挑戦してみたいです」 「自分のつくりたい作品をぶれずに仕上げようと思っていたことを貫けました。今後は、国内大会の知名度を上げる活動もできたらいいですね」〈ベーカリー(製パン)〉〈レストランサービス〉閉会式、帰国の途へ〈金賞〉〈銀賞〉入賞喜びの声働く広場 2023.6      「レストランサービス」(写真:豊浦美紀)「ベーカリー(製パン)」「陶芸」12

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