ことができる環境のほか、「体を動かし、一日の作業後に達成感を持てたのもよかった」そうだ。いまも2カ月に1回通院し、「寝る時間と起きる時間は休日関係なく固定し、食事もしっかり摂る」など健康管理に努める。とはいえ、急な気温や気圧の変化で激しい頭痛に襲われることもあるという。いまのところ水曜日以外は半日勤務だというAさんは、「いずれはフルタイム勤務ができるよう努力していきたいです」と話してくれた。フジイコーポレーションの主要部署である製造の現場では、2022年に障害のあるシニアを採用した。フルタイム勤務の幸こ田だ昌ま徳のさん(60歳)は、鋼材事業部でレーザー加工の補助作業を担当している。幸田さんは前の職場で、人間関係のトラブルに遭い、自身の障害にも対処してもらえなかったため、障害者就業・生活支援センターとハローワークに相談し、フジイコーポレーションを紹介してもらったという。いまも時々うつの症状が出るときは、電話で連絡をして休ませてもらったり、就業中は休憩させてもらったりするそうだ。 「前職の工場のラインで働いていたときは、人の多いところが苦手なため悩みました。この会社では、病気に対して配慮してもらえるので、集中して働くことができます」1年半ほど働いてきたなかで「1日でどのくらいの仕事をこなせるか」が把握できるようになってきたそうだ。幸田さんは、「うまくできないときもあるが、目ざしていた仕事量をこなせると達成感があります」という。職場でも戦力となりつつあるようだ。モデル事業受託から9年。広報などの立場で見守ってきた森田さんはこう話す。 「会社で障害者雇用を進める前は、私自身も障害のある人と接する機会がほとんどなく、一緒に働くことはむずかしいのではないかという思い込みがありました。でも、同僚として彼らの働く姿を見て、話す機会を重ねるうちに、特別視することもまったくなくなりました」一方で、総務部長として障害者雇用の推進を担当する小お幡ば高た人とさんは率直にこう明かす。 「障害のある人たちは、精神的または身体的にデリケートな人が多いように思います。ちょっとしたことがきっかけで身体の不調を訴えるケースもよく見受けられます。私たちの職場でも過去に、職場に慣れ、仕事も覚えて、『さあ、これからだ』というときに突然不調になり、職場に来られなくなって残念ながら退職してしまった人がいました」モデル事業の2年間に採用した3人のうち2人が、その後に退職したそうだ。小幡さんは「まずは定着までしっかりとケアをしていくために、外部機関による就労定着支援プログラムなどを活用し、気長にそして粘り強く取り組んでいくことが大切だと考えています」としたうえで、今後の方針についてこう話してくれた。 「ずっと補助的に同じ仕事をしてもらうのではなく、少しずつ仕事の幅を広げ、本人だけでなく周りで働く人たちも成長が実感できるようなレベルまで引き上げていきたいと考えています。『定着』の次に『成長』、そして『戦力化』を目ざしていくつもりです」ものづくりの現場でも粘り強く支援を続けながら総務部長の小幡高人さん(写真提供:フジイコーポレーション株式会社)鋼材事業部でレーザー加工の補助作業を担当する幸田昌徳さん(写真提供:フジイコーポレーション株式会社)工場での組立て作業の様子(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) りさう たか 9働く広場 2023.7
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