働く広場2023年7月号
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どこで、だれとなら安心して働けるのかを見きわめ、働く人の組み合わせや配置をつねに考えて修正していく。例えば一人になりたい人には、少し離れた作業小屋を用意している。道智さんに解説していただいた。世の中みんな忙しいから、泡立てなければ使えない固形石鹸の市場は、縮小してきているのかなと思います。いま日本では大手の石鹸屋さんが減っています。しかし、これから必要な時期が来るのではないかとも感じています。設備の維持もたいへんですし、油からつくるのは職人仕事なので一朝一夕でできるものではありません。ただ、どこかが石鹸づくりをやめると、      どこかに仕事が流れてくるので、がんばって続けていれば、将来の受注につながると思います。そうすると、もっと障害者を雇用できるのではと考えています。また現在、大きな釜で炊く工場が減ってきています。戦後、釜を入れて石鹸をつくりはじめた工場は、いま老朽化が進んで交換する時期ですが、釜は大きいので建物を壊して入れ替えなければならない。でもいまは、固形石鹸はそこまでするほどの商材ではなくなってきているので、大手メーカーはそのタイミングでやめています。ですから、うちが釜炊きを続けていれば仕事が増えるかな、と思っています。うちでいま使っている釜は、あるメーカーの先々代から譲ってもらい、機械練りの装置も1台もらいました。そして、売り方などもいろいろ教えてもらいました。なにか新商品をつくろうと考えるとき、うちのような小さなメーカーは少量から始められるので、「こういう商品つくれない?」という話をいただきます。新しい商品が生まれてくると、作業の種類も増えるので、障害者に任せられる作業も多くなり、とても助かっています。原料については、オーガニックの農園道智 の方も多いのですが、自分のところで育てた作物を石鹸や化粧品に入れたいという方も結構いらっしゃる。大手はちゃんと検査したものしか入れられないけど、うちはそれをどうやったら使えるかな、と考えていきます。例えばカビが出そうなものならまずエキスに抽出して、成分を使おうとか。お客さんが持ってきたものをできるだけ使ってみます。大きすぎるロットは大手に回し、逆に大手で門前払いみたいなものはうちに連絡してもらうという、持ちつ持たれつでやっています。先代が、「寝ている人にも給料を払い続けて、長く勤めてもらえば、スキルはだんだん伸びてくる」とよくいっていました。普通の人が1〜2カ月でできることが2〜3年かかることもあります。道智 石鹸づくりの未来小さなねば塾の強み寝ている人にも給料を払い続けた話●経営の特徴④適材適所を必ず見つける道智 化粧石鹸などの製造に使用される「機械練り」の装置。障害のある社員が、操作やメンテナンスを担当しているねば塾の石鹸は手づくりのため、小ロットの生産にも対応できる工場に据えつけられた「釜」を使い、「釜炊き職人」である障害のある社員が生油から石鹸を炊き上げる昭和20年代に製造された「製粉機」。取り扱いはむずかしいが、障害のある社員が「粉引き職人」として使いこなしている包装作業の様子。袋詰めし、ラベルを貼りつける働く広場 2023.723

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