働く広場2023年7月号
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岸ぎ広ひ己みさんは「私も障害者職業生活相談 ろし ま       6始めたフジイコーポレーションを後押ししたのは、新潟労働局が2014年度から2年間の予定で「精神障害者等雇用促進モデル事業」の実施企業を募集したことだった。さっそくこのモデル事業を受託したフジイコーポレーションは、初年度に精神障害のある人を2人採用した。採用に先立ち、当機構(JEED)の新潟障害者職業センターの事業主支援を利用して、幹部や支援担当社員らを集めた研修を行ったほか、県内で障害者雇用を進めている複数の企業を見学して回った。支援担当社員は、障害者職業生活相談員の資格認定講習を受講し、現在6人が資格保有者だ。採用した2人は機械事業部に配属され、部品の袋詰め作業からスタートした。繁忙期には派遣社員が対応してきた業務だ。当時から支援者としてかかわってきた機械事業部販売部業務グループ係長の山や員の資格を取りましたが、一緒に働いてみると、それぞれ特性なども違いますから、だれにどんな仕事をどれぐらい任せてよいのか、悩むことが多かったですね」とふり返る。2人が通っていた就労移行支援事業所の担当者や、新潟障害者職業センターの職場適応援助者(ジョブコーチ)とも相談しながら慎重に仕事量などを決めていたが、1年経ってようやく慣れたころから、2人がかわるがわる急に体調を崩すようになった。「2人はそれぞれ、気がききすぎる、逆に気にしなさすぎるという両極端の特性があったため、互いにストレスになる部分もあったようです」と山岸さん。2人が一緒に働くことはむずかしいと判断し、1人は別の部署で、それまで外注していた部品組立て作業などを担当することになった。こうした試行錯誤のなかで山岸さんの救いになったのが、新潟県臨床心理士会から月2回ほど有料で派遣してもらっていたカウンセラーとの面談だった。「こういうときはどう接したらよいか」といったケース相談をしていたほか、障害のある2人が職場側に直接いえないような悩みなどを、カウンセラー経由で伝えてもらっていたことから、対応策も一緒に考えることができたという。 「支援担当社員のなかには『特に相談することはない』という人もいましたが、私自身は、具体的な課題がなくても、話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になるようでよかったです」カウンセラーの派遣は5年間続けられたが、支援担当社員たちもひと通り対処法などに慣れたため終了となった。いまは支援が必要な状況になったときに、連携先の障害者就業・生活支援センターなどに相談して対応にあたっている。 「面談がなくなった当時は『もう必要ないだろう』と思っていましたが、ある程度の経験を重ねてきたいまだからこそ、あらためて聞きたいこともありますね。3カ月か半年に1回ぐらい、気軽に情報交換できるような場があってもよいのかもしれません」と、山岸さんは話す。モデル事業期間に入社した精神障害のある40代の女性は、いまは週1回4時間の勤務で、おもに部品の袋詰め作業を担当している。ハローワークからフジイコーポレーションを紹介される少し前に、障害者手帳を取得したという。この会社に入社してよかったことを聞いたところ、こう返ってきた。「差別なく接してもらえる」精神障害のある40代女性は、部品の袋詰め作業などを担当している(写真提供:フジイコーポレーション株式会社)機械事業部販売部業務グループ係長の山岸広己さん働く広場 2023.7

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