働く広場2023年7月号
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 「一人の人間として接してもらえることです。ほかの会社でトライアル雇用で仕事をしたときは、障害者として線を引かれていると感じました。ここでは差別なく接してもらえています」女性は、体調のよいときは工場で部品を集める作業なども行っている。担当社員が最終確認をするが、それまでの作業を自分に任せてもらえることがうれしかったそうだ。 「もちろん間違っているときは注意してくれます。以前は、仕事を間違っても優しくいわれるだけだったり、担当者が代わりに作業したりすることがありました。気を遣われていることがわかり、ここにいてもよいのだろうかと不安になりました」現在は監督者がつくことはなく一人で作業するときもあり、「信頼されていると感じます」。ゆっくりと、自分のペースで着実に成長していく日々だ。モデル事業のあと、2020年からは3年続けて障害のある人を1人ずつ採用した。最初の1人が阿あ部べ達た也やさん(39歳)だ。専門学校卒業後に溶接関連の会社に就職したが、職場になじめず1年ほどで退職。いくつか派遣の仕事をした後に、就労継続支援B型事業所に6年ほど通い、外部から受託した商品の袋詰め作業や清掃、農作業などにたずさわったそうだ。試行錯誤の末、阿部さんは職業能力開発校の新潟県立三条テクノスクール(三条市)に入学し、職業訓練としてフジイコーポレーションに約2カ月間通った。当時の作業内容は「社内緑化作業と部品塗装作業」だったが、会社側は阿部さんが農作業を得意としていることを知り、その後おもな業務を「緑化作業や園芸作業ほか」と変更して阿部さんを採用した。「障害者雇用にかかわるグランドデザインの導入時は、昨年75歳で勇退されたシニアアドバイザーの清し水み和か夫おさんに指導してもらいました。職場での長年の経験を活かし、工夫を重ねてくださいました」と森田さん。阿部さんがつけ加える。 「就労継続支援B型事業所に通っていたころ、畑を耕して野菜づくりをしながら『こういう仕事ができたらいいな』と話していたので、願いがかなってよかったです」阿部さんの指導役を務めているのは、橋は敏と之ゆさん。在職38年のベテラン社員だ。機械事業部販売部技術支援グループの高た園芸や農業が趣味で、自発的に職場内の緑化活動もしていた高橋さんが、阿部さんの入社を機に、一緒に取り組むことになった。 「阿部さんは『対人関係が苦手』だと就労継続支援B型事業所から引き継ぎがありましたが、社会生活でコミュニケーションは大事ですから、職場の社員らに紹介し、なるべく仕事で人と接する機会をつくるようにしました」阿部さんは記憶力がよく、人の名前と顔をすぐに覚えたそうで、「○○部の○○さんのところにこれを届けてください」などと、何かにつけて他部署に行ってもらっていたそうだ。その効果もあったのか、「阿部さんは見違えるように変わった」と就労継続支援B型事業所の担当者も驚いているという。阿部さん自身も「この会社に入って、周りの人がよくしてくれるので変わったんですかね」と笑顔で話す。高橋さんは「仕事内容がうまくマッチしたことも奏功したと思います。いまは、わからないことがあれば積極的に聞いてきますし、私がいないときも、ほかの社員とうまくやっ つ    ずず   かきしし7緑化作業や園芸・農作業も阿部さんの指導にあたる高橋さん機械事業部販売部技術支援グループの高橋敏之さん製品の一つである草刈機で芝の手入れを行う阿部さん緑化作業・園芸作業などを担当する阿部達也さん働く広場 2023.7

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