働く広場2023年8月号
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ねいに教えてくれています。計算も得意で、しっかり仕事をこなすので、スキルアップを目ざしてほしい」と激励していた。次に見せてもらったのは2次加工の現場だ。ミンチ用の機械の組立てや操作、精肉用に細かく整えるカット作業は、専門的な技術が求められる。ここのテーブルの上で肉を切り揃えていたのは、熊本ミートセンター加工課所属で入社12年目の内う田だ麗れ王おさん(29歳)。最初は加工補助を担当していたが、5年ほど前に、「自分も包丁を扱う作業をしてみたい」と手をあげたそうだ。「ハムをつくるための肉処理作業に苦労しています。分割して脂身をそぎ落とし、筋引きをするのがむずかしい」と話す一方で、「仕事に自信も出てきたので、正社員を目ざしています」と明かしてくれた。ちなみに障害のある従業員はパート従業員と同じ時給制で、年1回の評価制度によって昇給していく。正社員への道も開かれており、過去に1人実現している。内田さんは、先輩社員とペアで作業をし、指導を受けながら、ソーセージの腸詰め作業にも挑戦するなど着々とスキルアップを重ねている。白石さんも「2次加工は商品に合わせた仕様が複雑ですが、彼は注意点などをメモにまとめるなど向上心が高いですよ」と評価する。内田さんのメモを見せてもらったところ、驚くほど細かく書かれていた。2012年に開設された菊池ロジスティックセンター(熊本県菊池市)では、から出荷される商品の管理・発送を行っている。ここでは障害のある従業員6人が働いている。現場の大きな冷蔵室を見学した。一角では、ミートセンターの加工商品を一つひとつ金属探知機にかける作業が行われていた。パート従業員の女性と一緒に次々とソーセージの真空パック商品を流していたのは、入社16年目になる荒あ木き優ゆ介すさん(36歳)。当初は発送準備をしていたが、5年ほど前から金属探知機の担当になった。探知機の反応だけでなく、自ら目で確かめて異物混入や真空もれ、ラベリングのミスを見つけ出す。 「繁忙期は扱う数がとても多いので、注意力と体力が必要です」と説明する荒木さんは、じつは昨年、勤務中にてんかん発作で倒れてしまったそうだ。「10年ぶりの発症でした。薬を飲みながら無理をしないよう健康第一で続けていきたい」と話す荒木さん。いまは職場でヘルメットを着用しているほか、車を運転して通勤していたのを家族の送迎に切り替えた。 「荒木さんは、ミスなどを見つけるのがとてもうまいので助かります」と話すのは、菊池事業部部長補佐を務める吉き川か諒り哉やさん。 「現場では、障害のある人とない人がペアになるようシフトを編成します。いろいろな人と組むことになりますが、業務によっては得意、苦手という場合もあるので、互いに補い合えるよう配慮します」さらに心がけているのは「配慮とわがままを見分けること」だという。相談や質問があるときは自分から来てもらい、「この作業はむずかしいからできない」といわれても、すぐに変えるのではなく、何がむずかしいのか、どこを工夫したらできそうなのかを一緒に考える。 「働くからには成長してほしいので、安易に妥協してほしくありません。スキルアップや多能工化の可能性を少しでも広げていきたいですね」職場全体でも、以前は配送荷物をピッキングするだけだったが、商品へのラベル貼り、ギフト箱へのセットアップなどの流通加工作業へと拡大してきた。ょう注意力が必要な金属探知機出荷する商品の異物チェックを行う荒木さん菊池ロジスティックセンターで働く荒木優介さん内田さんは、肉の2次加工を担当している熊本ミートセンター加工課で働く内田麗王さん40社超の取引先や併設のミートセンター働く広場 2023.8   けうら   ち っわ 8

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