一方で繁忙期には、地域の福祉作業所など3カ所と連携して、ゼリー商品の包装や箱折りなどの業務を委託している。「忙しくない時期にも少しずつ依頼して練習を重ねてもらい、繁忙期には3カ所で力を合わせて作業してもらっています」という吉川さんは、福祉作業所にかかわる印象的な思い出も話してくれた。 「高校時代、通学電車で知的障害のある人をよく見かけていて、どこに通っているのかなと思っていました。すると入社後、その本人が福祉作業所から応援で職場に来ていて、ものすごく作業ができる姿に衝撃を受けました。そのとき『障害があるからといって仕事ができないと思ってはいけない』と実感したのです」ちなみに吉川さんは入社1年目のときに、障害のある先輩従業員から冷凍品のピッキング作業などの仕事を教わったそうだ。共同が障害者雇用を始めた当初から り 9部署の所属長、就労移行支援事業所が参ずっと続けているのが、月1回の職場定着推進委員会だ。会長をはじめ社長、各加する。ちなみに共同には現在、障害者職業生活相談員の資格を持った社員14人が各部署にいる。吉川さんによると「毎回、全員分の報告書を出しますが、仕事面だけでなくプライベート面で気になったささいなことも書いていますので、『特になし』はありません」とのこと。最近も、職場で毎日4本ぐらい甘い缶コーヒーを買って飲む従業員がいたが、会社として注意をうながすことにしたそうだ。「本人は『さすがに会社からいわれたのなら』と襟えを正し、購入本数が減っています」と吉川さん。 「特に会長は、全従業員のことを入社時から把握してくれているので、的確なアドバイスをもらえます。会議で直接相談できるのが何よりありがたいですね」社長の海南子さんも「毎回欠かさず一人ひとりの状況を確認できることは何より安心できますし、それぞれ成長に向けて挑戦していることもわかります。場合によって産業医や指導員などからの助言もいただき、みんなで情報や思いを共有しています」海南子さんは最近、共同が取り組んできた障害者雇用を再認識する機会があった。それは、同業他社を訪れて先駆的な管理体制などを学んだ際、その会社の社長から「効率を追求しているが、現場の雰囲気が少しギスギスしている。部下には『社員は機械じゃないのだから』と伝えている」と率直に明かされたことだという。 「私たちの会社では、そういう問題は起きていませんし、生産性も落ちていません。じゃあ何が違うのかと考えたら、障害のある従業員が多く、しかも一緒に働いていることだと気づきました。環境整備や配慮、理解も進み、全員の心理的な働きやすさも広がっているように思います。最近は、共生社会を目ざす会社の方針に共感して、入社してくる若い世代が増えていることも心強いですね」海南子さんは、会長の敏文さんがこれまで社内で、「障害のある人も一緒に働くことで交流が生まれ、互いに学び合うことが大事だ」と伝え続けてきたことの影響の大きさをふり返る。 「さまざまな部署で、ごく自然に交じり合ってあたり前のように接している職場は、本当に私たちの会社の宝だなと感じています。そしてこれからも絶対に引き継がなければならないと肝に銘じています」月1回の会議で全員分の情報共有自然に交じり合う職場は「宝」山下敏文さん(左)と山下海南子さん(右)菊池事業部部長補佐の吉川諒哉さん菊池ロジスティックセンター働く広場 2023.8
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