働く広場2023年8月号
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悩みをいえる場を整え一人で抱え込ませないモチベーションを保ててこそ質の高い雇用が提供できる身のモチベーションを維持するために、どのような姿勢で業務に取り組んだらよいでしょうか。野路さんは話します。 「担当者の業務の一つに、障害のある社員への支援があります。その目的は、障害者雇用促進法の第4条にあるように『障害のある労働者が職業人として自立する』ことをサポートすることです。担当者は、障害のある人の成長に寄り添い、伴走し、職場全体で自然なサポートが行われるようになること、最終的には特別な支援が必要ではなくなる状態を目ざします。しかし、熱心なあまり、〝転ばぬ先の支援〟になりすぎたり、担当者自身が疲弊してしまうケースもあります。そのような場合には、支援の目的に    立ち戻り、上司や周囲の社員、できれば外部の支援機関なども含めて、支援の方法を見直す必要もあるでしょう」障害者雇用担当者が日々の業務でストレスを感じていても、それを話せる場がない場合、ストレスを増大させる原因になってしまいます。その対策の場について、野路さんが説明します。 「職場の上司や同僚に対してはもちろん、私どものような第三者の立場にある支援機関に対しても、自身の不安や不満はいいにくいと感じている担当者が多いと思います。担当者が悩みを抱え込むことのないように、一部の企業では、外部の『カウンセリングルーム』や『メンタルヘルスのクリニック』などを活用して、積極的に障害者雇用担当者のメンタル支援に取り組んでいる事例もあります。守秘義務が遵守され、人に相談しにくい悩みも安心して相談できる環境があることは、孤立しがちな担当者にとって心強いサポートとなるでしょう」また、近年、障害者雇用の現場では、障害のある人同士の「ピアサポート(同じような立場の人による支え合い)」の重要性に注目が集まっています。それと同様に、障害者雇用の担当者同士が企業の枠を超えて連携し合い、情報交換をするピアサポートの仕組みの必要性も高まっている、と野路さんは話します。 「さらに障害者雇用が進むなかで、私たちTALANTでも、勉強会や交流会などを通じて、担当者同士のピアサポートを促進する機会を、これまで以上に積極的に創出したいと考えています」障害者雇用は〝人の未来〟にたずさわる重要な仕事であり、障害者雇用にかかわる方はそれをモチベーションにあげる方も多いようです。就労が困難な状況にあった人が適切な支援を受けることで職場に定着し、「いろいろとたいへんなこともありましたが、支援してきた障害のある社員が成長して業務をこなせるようになりました。活躍する姿を見ることができてうれしい」といった企業の障害者雇用担当者の声を、TALANTのみなさんも聞かれるそうです。取材先では… 「2022年の障害者雇用促進法の改正で、〝雇用の質〟の向上が事業主の責務となりました。そのためには障害者雇用担当者が安心して業務を行い、健全なメンタルでモチベーションを保ててこそ、質の高い雇用が提供できるのではないでしょうか」と、野路さんは語ってくれました。働く広場 2023.8https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html1.「支援スタッフ」へのメンタル支援  近隣のカウンセリングセンター『カウンセリングルームたま』(日野市)と提携し、「支援スタッフ」を対象にしたメンタル支援を実施。1回500円の自己負担金(法人の負担は5000円)で、臨床心理士のカウンセリングを受けられる制度を導入している。運営法人である「特定非営利活動法人わかくさ福祉会」の職員も含めると、10%ほどの支援スタッフに利用実績があり、その必要性と有効性が感じられている。地域障害者職業センターの支援 当機構(JEED)の地域障害者職業センターでは、障害者雇用担当者間の交流の機会として、「事業主支援ワークショップ」をはじめ、さまざまな支援を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。2.障害者雇用担当者交流会 障害者就業・生活支援センターが開催している障害者雇用担当者の交流会はいろいろあるが、TALANTでも、「障害者雇用の事例の紹介」や「支援機関の利用の仕方」の勉強会、グループワークを通じた「他社の担当者との情報交換」などを行っている。会場への来場のほかに、Zoomを使ってオンラインで参加することも可能。障害者就業・生活支援センターTALANTの取組み例ご活用ください!11

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