①障害者雇用を開始・進めるうえでの「人」との出会い②勤務時間延長を図るうえでの自己決定や支援機関との連携の重要性障害者雇用のきっかけは、前述の通り前社長の思いからとのことではあったが、具体的にはどのようなものだったのか。一つのきっかけはスタックスも加入している「神奈川県中小企業家同友会川崎支部」だった。この中小企業家同友会の講演で、川崎市にあり障害者雇用の分野で有名な、日本理化学工業株式会社(※2)の元会長の大■山■泰■弘■さんのお話を前社長が聞いたことである。もう一つのきっかけは、別の地域団体である「一般社団法人川崎中原工場協会」で、前社長が就労移行支援事業所を経営する経営者と出会い、意気投合したことだった。なお、こちらの就労移行支援事業所から、1人目の障害のある従業員の方(現在も継続して勤務中)を採用した。また、そのようなことがきっかけで、地域の障害者雇用に関する会合で事例の発表を行うことになり、そこから川崎市や障害者地域就労援助センターとの出会いもあり、精神障害や高次脳機能障害のある人の短時間雇用を開始することにつながっていった。このようなお話を聞き、「人」との出会いや、その流れに沿って行動を起こすことの重要性、さらにはそのようなことが起こるタイミングの絶妙さを感じた。短時間勤務から始め、その後勤務時間延長につながった従業員の方2人の状況についてもお話をうかがえた。この2人については対照的であったとのこと。1人は当初1日2時間の勤務であったが、入社後2〜3カ月ほどで能力が高いことがわかってきたため、会社としては「もっと働いてほしい」と考え、勤務時間の延長を提案した。しかし、本人はなかなか自信が持てず、「夏場などの季節を乗り越えられるか自分でも確認したいので、それまで待ってほしい」という慎重な返事であった。本人の気持ちに合わせて、最終的には入社から1年後に延長を行ったとのことであった。なお、このような勤務時間延長を進めるにあたって、本人が利用していた就労支援機関とも相談するなど連携を図ったとのことであった。もう1人の方も1日2時間から開始し ■■■■しかし、会社側から見るとまだ仕事のでたが、入社当初から本人は「すぐにでも時間を延ばしてほしい」と希望していた。きる幅が十分ではなく、延長することができなかった。そうしたなかで本人に会社への不信感が芽生えることがあったが、会社と就労支援機関とで歩調(意見)を合わせて本人と接することで、「会社もセンターも同じことをいっているんだ」と納得するようになった。そして業務の幅も拡がり、現在は1日4時間以上まで延びているとのことであった。このように勤務時間を延長して、より安定的な収入や社会保険などの保障につながったほうが望ましいのはたしかだが、そこには本人の気持ち(自分の状況についての認識や自信)や、会社側の見立て、さらには支援機関との連携も重要であることがうかがえた。障害のある従業員の方からお話をうかがうことができた。Aさん(20代)は、「いまは、検査補助や両面テープを使った組立てを行っています。勤務時間は、最初は1日2時間でしたが、いまは時間が倍になり、給与も増えました。ですが、お金よりは、体調のほうが大事だと思っています。就職してから、今年で7年目ですが、新しい業務もできるようになってきています。今後は、資格などを取って障害のある従業員の方からのお話と作業場訪問Aさんは、検査補助や組立て作業を担当している(写真提供:株式会社スタックス)※2 本誌2022年7月号「編集委員が行く」(大塚由紀子委員)でご紹介しています。https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202207/index.html#page=23 スタックスが手がける精密板金の一例(写真提供:株式会社スタックス)働く広場 2023.822
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