②セルフケアツールの意義についてに集まってお話をしてくれたが、とても元気だった。彼らはK−STEPを使用しているという。そのことに感銘を受けたのが、K−STEPに興味を持ったきっかけだそうだ。前述の通り、K−STEPとは川崎市が普及を図っている手法で、「セルフケアシート」にいまの状態をチェックし、上司や同僚にシートの報告をすることにより、障害や配慮提供など職場の理解を促進するプログラムだ。そして前山さんはK−STEPの導入を考え、その開発元の就労移行支援事業所にも相談し、就労移行支援事業所向けの説明会に参加させてもらう機会があったとのことであった。また、熱心な川崎市職員がいることや、市としてK−STEPを普及しているという地域柄も影響しているという。支援ツールが存在することは大前提であるが、そのツールとの「出会いの機会・場」も重要であると感じた。 ■■として、使用する障害のある従業員たちルフケアツールについて、興味深いお話をうかがうことができた。まずその効果は、ツールを使っているほうが状態の悪化が防げることを実感しており、継続使K−STEPをはじめとした種々のセ用を希望しているということであった。また、ツールの使い方については、会社側が一方的に指定・指示をするのではなく、会社とユーザーである障害のある従業員が一緒につくりあげていったそうだ。これらはあまりツールの使用に関して指摘されていないことだと思われるが、きわめて重要なのではないだろうか。ツールの使用について、「天下り式」、「上から指定」ではなく、使う側やその職場風土、その時々の状況に合った形で、かつ有効性を担保しつつ、ツールを導入・継続使用していくことの重要性をあらためて感じた。また、これらのツールを使用することでセルフケアの力を育成する意味についても前山さんは語っておられた。一般に、障害のある従業員のスキルというと、作業遂行などのワークスキルやコミュニケーションスキルの方に注目しがちであるが、それはいわば氷山の一角、水面上に出ているものであり、水面下にあるセルフケアの力が重要なのではないかと考えているとのことであった。セルフケアの力というのは、業務遂行スキルなどと比べより基礎的な力であるが、会社としてそのような力を障害のある従業員につけてもらうことは、ある意味「初期投資」であり、本人たちの問題解決力の向上につながっていくという。また前山さんはこのようなことは、特例子会社だからできるということではなく、ほかの会社にも共通することであり、ぜひ多くの企業に知ってもらいたいと、おっしゃっていた。障害のある従業員からの前山さんからお話をうかがった後、宮崎台事業所での業務の様子を見学させていただいた。この日、障害のある従業員は、名刺印刷、学習塾新規入塾希望者への資料発送業務、データベースの作成業務などを行っていた。オープンスペースでの業務は、2019年の本誌掲載時(23ページ※3)と同様であるが、コロナ禍を経験し出勤が分散されるようになっていることや、金曜日に訪問したため通院の人が多く、前回の本誌掲載時よりは職場に出勤している人の数は少ないという。それでも従業員の方々は、それぞれの業務に黙々と取り組んでいた。続いて従業員の方からもお話をうかがった。まずは酒■井■哲■生■さん(52歳)が、抱負などについて語ってくれた。お話と作業場訪問複合機を使い、名刺印刷を行う酒井哲生さん株式会社湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所働く広場 2023.824
元のページ ../index.html#26