厚生労働省が2021(令和3)年6月に公表した「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書」は、就労支援の現場で行われるアセスメント(就労能力や適性の客観的な評価を行うとともに、就労に関するニーズ、強みや職業上の課題を明らかにし、ニーズを実現するために必要な支援や配慮を整理すること)について次のように問題を指摘しています。「障害者にとってどのような福祉施策や雇用施策のサービス等がふさわしいかの判断が現場の個々の担当者に任せられているのではないか、そのため、障害者の就労能力や一般就労の可能性について、障害者本人や障害者を支援する者が十分に把握できておらず、適切なサービス等に繋げられていない場合もあるのではないか」。本調査研究の目的はこのような問題認識のもと、障害者の支援ニーズや就労能力の現状等を障害者職業総合センター研究部門 把握して適切な支援につなげていくための新たな評価ツールを開発することでした。開発した「就労支援のためのアセスメントシー 2・対象者のストレングスに着目する仕組みの導ト」の特徴・アピールポイントは、以下の通りです。・支援者と支援対象者(以下、「対象者」)の協同評価方式の採用:支援者が対象者を一方的に評価するのではなく、対象者と支援者がそれぞれ評価の根拠となる具体的情報(作業場面や職場実習のどのような場面でどのような行動が観察されたか等)を明確にし、それを共有したうえで現状認識をすり合わせます。このような評価方法により、対象者が就労に関する自分の状況をより客観的に理解できるようになることが期待できます。入:対象者の強みや長所に着目することによ障害者支援部門・事業主支援部門・就労継続を妨げる要因の発生予防を目ざした・エビデンスに基づくツール開発:就労支援、り、対象者や支援者が「自分(対象者)の力を発揮できる仕事や環境がどのようなものか」を理解することをサポートします。支援や配慮を検討する仕組みの導入:既存の評価ツールでは「就職した後にどのような問題が発生する可能性があり、その問題の発生を予防するためにどのような手立てが考えられるか」といった検討は対応範囲に含まれていませんでした。本調査研究では就労支援機関および企業を対象とした調査を実施し、就労継続を妨げる要因を把握しました。その結果に基づき、就労継続を妨げる要因の発生の可能性や対処の可能性を検討するための仕組みをツールに組み込むことで、安心して働き続けるために職場に依頼すべき支援や配慮を就職前の時点でも検討できるようにしました。障害者雇用、特別支援教育といった各分野の関係者から構成する研究委員会等における検討、就労支援機関および企業における調査、就労支援機関における評価ツールの試作版の評価などを経て改訂や修正を重ね、評価ツールとしての質を一定程度、担保しました。例えば、後述の「就労のための基本的事項」についての評価項目は、本調査研究が実施した企業調査において、回答企業の50%以上が障1 はじめに「就労支援のためのアセスメントシート」の特徴・アピールポイント―「就労支援のためのアセスメントシート」の開発―就労困難性(職業準備性と就労困難性)の評価に関する調査研究※1 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai78.html働く広場 2023.828
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