発達障害者の就労・キャリアアップの現状と課題昨今、「発達障害」という言葉がメディアで広 2身がADHD(注意欠如・多動症)の診断を受く取りあげられるようになり、大人になってから診断される人の数は増え続けています。私自けた2003(平成15)年ごろは、発達障害という言葉はまだ一般的ではなく、診断ができる病院も数えるほどしかありませんでした。2004年に「発達障害者支援法」が制定(2005年に施行)されたことで「大人の発達障害」が注目されるようになりましたが、当初は発達障害の診断だけで障害者手帳を取得することはむずかしく、就労のサポートもなかなか受けられませんでした。その後、2010年に「障害者自立支援法」が改正され、発達障害が同法の対象となることが明確化、2018年に精神障害者が障害者雇用義務の対象に加わったことで、やっと障害者枠での就労が選択肢に入ってきました。つまり、大人になってから発達障害と診断された人たちの、障害者枠での勤続年数は長くても5〜6年ほどで、ここ数年でキャリアアップが話題にのぼるようになってきたという感じです。発達障害者に対する支援でむずかしいのは、特性の強さ(凸凹の大きさ)と困難性が比例していないという点です。目に見えて特性が強くても、周囲の理解でうまく適応し能力の高い部分が活かされれば、会社にとってなくてはならない人材となることがあります。逆に一見普通にできそうに見えても、本人が特性を理解できておらず過剰適応状態であったり、二次障害の精神疾患が重複したりしていると、どんなに環境を整えても不適応を起こして仕事に支障が出ることがあるでしょう。同じ会社で仕事が続けられるのは、たいへん理想的なことですが、障害者枠で就労してもこのような理由で何度か離転職することは少なくありません。それでも数カ所目かの職場でとてもうまくいくこともありますので、必ずしも同じ会社に勤め続けることにこだわる必要はないと考えています。実際に当事者が二次障害から回復し、経験値を重ねることで客観的に自分のことがわかるようになり、人間関係や仕事がうまくいくようになるのは30代半ばぐらいであることが多いようです。 「NPO法人DDAC」(発達障害をもつ大人の会)は、おもに大人になってから発達障害と診断された本人が主体となって活動している当事者団体です。前身となる自助グループが活動を始めた20年以上前からいまに至るまで、当事者の生きづらさはさほど変わっておらず、仕事が続かないこと、家庭や職場の人間関係がうまくいかないことが悩みの中心です。変わったこはじめに 発達障害と障害者雇用NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表当事者の現状 キャリアアップのいろいろ広野ゆい働く広場 2023.8
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