reasonable accommodation」はとは、ここ数年で障害者枠で就労している人が参加者の半数以上になっているということで、障害者枠がよいのか、一般枠がよいのかというのも大きなテーマになっています。現状では診断を受けたからといって全員が障害者手帳を取得するわけではなく、手帳を取得した人が必ずしも障害者枠で就労しているわけでもありません。このような健常者と障害者の狭間にいる人た 3あります。最初はうつや不安障害などの二次障ちにとって、転職がキャリアアップになることが害があって障害者枠での就労を望んでいても、数年経って症状が安定し、自分の特性への理解も進んで自分のできることがわかってくると、最低賃金かつベースアップもほとんどない待遇の場合、モチベーションを保つのがむずかしくなってくることがあります。また、症状が安定し、一人暮らしをしたり結婚をしたり、より充実した人生を歩みたいと思ったとき、現状では障害者枠の就労でも能力に応じてスキルアップやキャリアアップができるという企業ばかりではありません。その場合、もっと待遇のよい障害者枠の仕事に転職することや、得意分野を活かして再度一般枠の仕事にチャレンジすることがキャリアアップの手段になってくるのです。逆に仕事に慣れてもキャパシティオーバーになることを恐れて、「いまの待遇のままでいさせてほしい」、「キャリアアップはしたくない」という当事者も少なくありません。キャリアアップは大きなストレスにもなり得ます。大事なことは一人ひとり違うということ、そして本人のペースを尊重するということです。すべての人が安心して働ける社会はどうしたらできるのでしょうか。あらゆる違いや困難を抱えた人が一緒に働ける、多様な人材を活かせる環境を創ることは、これからの社会の課題です。最近では「グレーゾーン」といわれる人が増えています。基準をつくればその狭間にいる人が必ず出てきます。知的障害のグレーゾーンで、発達障害もグレーゾーン、精神疾患もグレーゾーンというような人は、支援も配慮も受けられず、不安定な非正規雇用の仕事を続けることを余儀なくされます。そして失敗し、傷つき、ひきこもる。人手不足が深刻になりつつあるなかで、そんな人たちが増え続けているのです。 「合理的配慮」は障害者だけのものではありません。今後は正社員か非正規社員か、障害者枠の雇用か一般枠の雇用かというような区別をせず、一人ひとりの状況に合った仕事や環境が、必要なすべての人に与えられる世の中にしていかなければなりません。個々の能力や特性、状況に合わせて仕事や環境を整えていく合理的配慮はaccommodation」ですが、「すべての人に必要なのです。そして、そのノウハウは長年障害者雇用を続け、戦力化してきた現場にこそあるのではないでしょうか。「配慮」ではなく、「調整・変更・和解」という意味です。これまでのやり方に、配慮をして入れてあげるのではなく、違いのある者同士が、合理的な範囲で互いに調整し合い、新しいやり方に変更していく、新しい環境を創り出していくということが本来の「合理的配慮」の意味するところです。そんな合理的配慮でだれもが活き活きと、自分らしく働ける社会ができれば、発達障害がただの「違い」として受け入れられ、障害ではなくなる日が来るかもしれません。ところで、合理的配慮は英語で「「合理的配慮」で すべての人が安心して働ける社会へ(ひろの ゆい) NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表。キャリアコンサルタント(国家資格)、公認心理師、ロゴセラピスト。 2002年よりADHDの自助グループを主宰、2008年に「発達障害をもつ大人の会」を設立し、リーダー養成講座、企業・一般向けの研修、講演を年に数十カ所で行う。また2009年から若者サポートステーションで就労困難な若者の支援を、2016年からは「株式会社Art of Life」を立ち上げ、人材活用・メンタルヘルスの企業向け研修プログラムを開発。多様な人材を受け入れ、活用できる組織づくりへのコンサルティングを行っている。 大阪府発達障がい者支援センター連絡協議会委員、大阪府発達障がい児者支援体制整備検討部会委員、兵庫県障害福祉審議会委員。広野ゆい働く広場 2023.8
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