九州の真ん中、熊本県合こ志し市に拠点を持つ物流企業「株式会社共同」(以下、「共同」)は、1971(昭和46)年の設立以来、トラック貨物輸送を中心に物流センターや食肉加工、レストラン事業などを多角的に展開してきた。同社が組織的に障害者雇用をスタートしたのは2003(平成15)年。きっかけは、1999年から3代目社長を務めていた現会長の山や下し敏と文ふさんが、地域で障害者雇用を進める印刷会社や社会福祉法人との夏祭りの共催を機に、障害のある人の働きぶりや、その一方で就労先が少ない状況を知ったことだったという。「物流の現場でも一緒に働けるはず」と、熊本障害者雇用支援センター(※)などと連携して障害のある人を雇用し始め、「共生社会づくり」を経営理念としてきた。それから20年を経て、全従業員278人のうち障害のある従業員は36人(身体障害2人、知的障害20人、精神障害14人)まで増え、障害者雇用率は17・75%(2022︿令和4﹀年6月30日現在)にのぼるという。2016年に「障害者雇用優良事業所厚生労働大臣表彰」を受賞、2018年に経済産業省「地域未来牽引企業」に選定、2020年には「熊本県リーディング企業」に認定されている。これまでをふり返り山下さんが話す。 「職場では、健常者と呼ばれる人たちと障害のある人たちが学び合いながら、互いにフラットな関係が浸透することで職場風土も変わっていきます。効率一辺倒の時代ではありませんから、多様性を内包できるような組織が強いのだと実感しています」現社長の山や下し海か南な子こさんは、父親である敏文さんから2023年2月に、代表取締役社長を引き継いだばかりだ。大学の法学部を卒業して司法書士を目ざしていたところ、敏文さんと一緒にあるセミナーに参加し、初めて父の会社の障害者雇用の取組みについて知ったという。「こんなにも人とかかわって役に立つ仕事なら、自分も一緒に働きたい」と思った海南子さんは、2005年に共同に入社した。その後はおもに営業職として、取引先開拓や新規事業の提案などにまい進してきた。続いて、現場で働くみなさんの様子を見学しながら、会社の取組みを教えてもらった。2009年に開設された松ま橋ば物流センター(熊本県宇う城き市)は、南九州に広がる取引先の量販店や外食・通販向けの物流拠点となっていて、取引先の商品管理、ピッキング、配送を一括受託しているのが特徴。ここで働く従業員約60人のうちとても広い倉庫の中で、スーパーの各店舗に配送される野菜入りの段ボール箱を車かごに積んでいたのは、中な間ま健け太たさん(41歳)。以前は介護職だったが職場にな日々の物流を支えるいてもらわないと困る存在POINT123 んか たまたましみ せつ う5株式会社共同の会長を務める松橋物流センターで働く※熊本障害者雇用支援センター: 就職が特に困難な障害者の雇用の促進を図るために、県知事が指定する民法法人が運営していたが、現在は廃止されている松橋物流センター山下敏文さん代表取締役社長の山下海南子さん中間健太さん20人が障害のある従業員だ。働く広場 2023.8トップ自ら、共生社会を目ざす職場づくりを経営理念に掲げ続ける全従業員の声を集めた改善活動で、だれもが働きやすい環境に会長・社長も参加する月1回の会議で情報共有と細やかな対応
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