働く広場2023年8月号
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人によって『できること、できないこと』はあります。苦手な部分はあっても、どれだけ長所を伸ばして活かしてあげられるかが大事だと思っています」例えば、数の計算は苦手でも力仕事に自信がある人と、体力は不安だが検品作業が得意な人が補い合えるようペアを組んでもらうといった具合だ。能力や相性を見きわめるためにも、日ごろから従業員一人ひとりと雑談を含めた会話を心がけているという。堤さんが続ける。 「口数の少ない従業員もいますが、調子が悪いときや悩みがありそうなときは、決まっていつもと違う動きをするので、声をかけると『じつは…』と話してくれます。解決できることはしますし、本人にも非があるときはきちんと納得してもらうよう説明しています」松橋物流センターは、数多くの取引先向けに多種多様な商品を扱う現場ゆえに、作業も複雑になりがちだ。従業員の負担を少しでも軽くし業務を円滑に進められるような改善活動にも積極的だという。主任を務める岡お田だ裕ゆ介すさんが説明する。 「日ごろから社員やパート従業員からのちょっとした声を集め、作業の段取りやレイアウトなどを変えています。みなさんの協力なしに進められません」最近も従業員からの提案で、飲料水など重量のある在庫商品を出荷のたびに移動させる負担と無駄を省くため、それらの保管場所を、出荷エリアにつくった鉄骨製の大きな棚に移したそうだ。物流現場での工夫について、センター長の堤さんも「特に力を入れているのは、だれもがわかりやすい現場の『見える化』です」と説明する。例えば仕分け先のかごには、店舗名とともに黄色や赤色のテープが貼られていて、文字よりはるかに見分けがつきやすい。ほかにも毎日、出荷の時間帯になると多数のかごが並び立つエリアでは、作業に使う備品の箱にすべて大きな文字で中身が表示されている。繁忙期にどこからだれが応援に来てもわかりやすいようにしているそうだ。共同は2012年、食肉加工を手がける熊本ミートセンター(熊本県菊池市)を開設した。取引先から搬入された枝肉のカット(1次加工)から、精肉やハンバーグの製造(2次加工)、ハム・ソーセージなど加熱処理商品の製造(3次加工)まで行うワンストップサービス事業を支えている。ここでは障害のある従業員7人が働いている。1次加工の現場では、大きな枝肉が手作業で部位ごとにカットされ、ビニール袋に入れられる。さらに真空包装をする機械に通すが、真空もれや金属などの異物混入があると、この機械が反応してエラー音が鳴る仕組みだ。ここで大きな塊かりの肉が入った袋を手ぎわよく並べて機械を操作していたのは、熊本ミートセンター原料課に所属する入社12年目の村む岡お政ま彦ひさん(29歳)。「機械でエラーが出たときは、異物の混入などを一つひとつ確認します。それでも原因がわからないときはすぐに上司に報告します」と説明してくれた。最近は精肉加工も担当するが、肉の繊維に合わせてスライサーの方向を調整するのに苦労したという。 「いまは毎日の作業にやりがいを感じます。職場で『次は脱骨作業も挑戦してみたら』とすすめられますが、まだ勇気がありません」と明かす村岡さん。これに対し、品質管理の主任を務める白し石い一は夢めさんは、「村岡さんは、新入社員や実習生たちへの指導がうまく、やさしくていたま「見える化」と改善活動食肉加工で「正社員を目ざす」かうけらしじ  さからこ     7熊本ミートセンター品質管理主任の白石一夢さん真空包装機に袋詰めされた肉を並べる村岡さん熊本ミートセンター原料課で働く村岡政彦さん熊本ミートセンター松橋物流センター主任の岡田裕介さん働く広場 2023.8

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