働く広場2023年9月号
11/36

その言葉の背景には、以前入社して間もないころ、社員がミスをして修理が遅れてしまい、お客さまが困っていたという話を伝え聞いたことがあったからだという。「現場の先にいるお客さまの存在を忘れてはいけない」と実感したそうだ。福田さんは昨年、念願の「ダイハツ部品士検定三級」に合格した。これは厚生労働省が認定する社内検定認定制度(※2)の一つだ。「私だけの力ではなく、職場のみなさんがいろいろと協力してくれたおかげです。次の二級は来年挑戦するつもりです。こういう目標を持っていたほうが、日々の仕事のやりがいもあります」と笑顔で話してくれた。そんな福田さんの話を聞いて、すぐに事務所から立派な賞状を持ってきてくれたのは、職場の上司である部品物流部部長の田た口ぐ勉つさん。 「三級は合格率が約50%と結構むずかしいのです。検定は必ずしも受ける必要はないのですが、福田さんから『受けてみたい』と申し出があったので挑戦してもらったところ、一発合格でした」福田さんと「合格したら日本酒をごちそうする約束もしていたよね」などと冗談をいい合っていた田口さんは、福田さんとむについて「みんなのとりまとめ役をしながら、積極的に倉庫内の改善活動に取り組んでくれています。パソコン操作も得意なので、苦手な社員にも教えてくれています。彼が通院などでいない日は、同僚たちと『今日はたいへんだな』と話すほどの大黒柱です」と話す。現場では、福田さんにかぎらず、だれもが休みやすい環境をつくるために、人員調整の工夫に力を入れているという。秋田ダイハツの代表取締役社長を務める長な野の高た則のさんにも、障害者雇用の取組みについて話をうかがった。長野さんは2021年6月に関東にあるダイハツ販売会社から異動してきたそうだ。 「前任地の関東の職場では、どちらかというと障害者雇用率を意識していたところもありましたが、秋田ダイハツの場合は、大事な戦力の確保として障害者雇用をとらえている面が強いと感じています。実際にさまざまな職場で障害のある社員が働いていますが、なにごとにも真面目に取り組み続けられる社員がとても多いのも印象的です」そのうえで、今後の方針については「少しでも長く私たちの会社で働き続けられるよう、彼らの社会的自立を見すえた待遇などの改善はもちろん、職場環境の整備が大切だと考えています。今年度も時給を少し上げたところですが、キャリアアップも大事ですね」と話す。 「まずは、本人がやってみたいということがあれば積極的に挑戦してもらいたいと思っています。例えば、国家資格を取ることで正社員登用の道も大きく開けていくでしょう。また、そうした目標に向かって努力する人が増えることで、職場にもよい影響が出てくるはずです」関東の職場では外国人の従業員も多かったという長野さんは、最後にこう語ってくれた。 「これからの時代は、障害の有無にかかわらないことはもちろん、女性もシニアも外国人も含め“全員野球”の姿勢で取り組んでいかなければ、企業として乗り越えていけないと思います。これからも、私たちの企業理念の一つである『社員一人ひとりが働いてよかったと思える会社』を目ざし、だれもが戦力として働き続けていけるための職場づくりを進めていきたいと考えています」“全員野球”の姿勢で  ち     がりか 9働く広場 2023.9※2 社内検定認定制度:個々の企業や団体が、そこで働く労働者を対象に自主的に行っている検定制度(社内検定)のうち、一定の基準を満たしており、技能振興上奨励すべきであると認めたものを厚生労働大臣が認定する制度代表取締役社長の長野高則さん部品物流部部長の田口勉さん

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る