当機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラムと、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムの実施を通じ、障害特性や事業主ニーズに対応した先駆的な職業リハビリテーション技法の開発に取り組んでいます。さて、今回焦点をあてた「注意」の機能は、「すべての認知機能の基盤である」といわれています。「注意」の機能が十分に働かないと、より高次にある「記憶」などはその機能を十分に発揮できません。当センターの利用者の中にも、「記憶」の機能への対処に取り組んでいても効果の出なかった人が、意識的に指示に注意を向けることで覚えることができたなど、「注意」の機能へのアプローチは高次脳機能障害者の就労支援において有効である例が見られています。以下、2023(令和5)年3月末に発行した支援マニュアル№24「注意障害に対する学習カリキュラムの開発」についてご紹介します。このカリキュラムでは「注意」の4つの機能に焦点をあてています。1つめは「続けられる力」で、注意がそれずに目的を持った行動を行うことです。2つめは「見つけられる力」で、いろいろな刺激の中からほかの刺激に振り回されないで1つの刺激を選択することです。3つめは、「同時に注意を向ける力」で、2つ以上の刺激に対して同時に注意を向けることで、「運転しながら音楽を聴く」のように「ながら」で表現されるものです。4つめは「切りかえる力」で、1つの行動から別の行動に注意を転換することです。1点めは、「受講者が自分の注意の特徴を知り、他者に説明できるようになること」です。カリキュラムの体験を通して、客観的に自分の特徴が把握できるようにしています。2点めは、「自己対処の方法と職場に配慮を求めることについ障害者職業総合センター職業センターて整理すること」です。注意を妨げる要因を取り除き、環境を整えるようにします。ワークで構成されています。います。まず、基礎知識を理解するための「講義」です。第1〜3回のグループワークの最初に15〜20分程度行います。2つめは「体験ワーク」です。課題の体験を通して、自分の注意の特徴について確認します。3つめは「意見交換」です。受講者同士が、発表を通して自分の注意の特徴に対する理解を深めます。最後は、「プチトレーニング」です。グループワークの時間外に、グループワークで学んだ内容を、日常生活や職業(作業)の場面と具体的に関連づけて体験するものです。「注意」の機能を補う対処策を継続的に使えるようにするために行います。 「続けられる力」と「見つけられる力」について取り上げています。読み上げた新聞記事を聞き取る体験を通して耳で聞く「続けられる力」、意味の無いひらがな文の「ら」の文字を〇で囲む体験を通して目で見る「続けられる力」について確認します。また、同時に読み上げた2つの新聞記事のうち片方のみを聞き取る体験を通して耳で聞く「見つけられる力」、間違い探しを通して目で見る「見つけられる力」について確認します。 「同時に注意を向ける力」と「切りかえる力」カリキュラムは各回90分、全5回のグループ各グループワークは以下の4つで構成されて●注意の機能について●カリキュラムの概要●カリキュラムの具体的な内容注意障害に対する学習カリキュラムの開発①カリキュラムの目的②カリキュラムの構成要素【第1回グループワーク】【第2回グループワーク】 働く広場 2023.9★1 「支援マニュアルNo.24」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support24.htmlよりダウンロードできます。28
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