装(※1)、障害のある人の感性により生み出され全国の多くの福祉事業所では、さまざまな「自主商品(授産製品)」を開発し、販売しています。手の込んだ細工が施された豪華な伝統芸能の衣るアート作品(※2)、予約で毎年売り切れる手染めの鯉のぼり(※3)など、魅力的な自主商品をご存じの方も多いと思います。しかし、福祉の専門家である職員と障害のある利用者が中心の福祉事業所で、優れた自主商品を創るのは、なかなかたいへんなことです。そこで都道府県を中心とする地方自治体では、デザイナーや技術者の派遣などによる自主商品開発支援を毎年行ってきました。貴重な支援機会を最大限に活かすため、障害者・支援者・外部の専門家など多様な人材が協力し合う、効果的なインクルーシブデザイン・コラボレーションの要点についてご紹介したいと思います。アクティブラーニングはさまざまな教育現場で効果を上げている学習手法で、受動的な講義ではなくディスカッションやアイデア展開、発表などを通して学生が能動的に学びを得ることが特徴です。この手法を福祉事業の商品開発支援プロセスに応用すると、長期的に商品開発力が向上する効果がありました(※4)。過去の支援では、プロのデザイナーなどの専門家が商品やパッケージデザインを提供することが多く、効果はあるものの短期間、単一商品で終わることも多々ありました。しかし近年では、あえてプロのデザイナーや技術者を介さず、支援者は商品開発の適切なタイミングとヒントだけを示し、ときにはディスカッションのなかから福祉事業所自身が課題を見つけ、アイデアを発案し、試行錯誤しながら学んでいくアクティブラーニングと同じプロセスを実践して、多くの福祉事業所の商品開発力を継続的に向上させているコラボレーションプロジェクトもあります(※5)。現場発想型コラボレーションは、専門家が福祉事業所の現場で環境を熟知し、利用者の特性を理解し、職員と相談しながら発想するプロセスです。大規模な予算を使いプロのデザイナーなどの専門家がさまざまな商品を考案しても、福祉事業所は制作することが技術的に困難で、結果的に不良品が大量に発生したり、材料経費や手間がかかりすぎて生産中止になったりする事例もありました。 2が現場で十分な時間を使って、職員や利用者とかかわりながら発想します。この結果、利用者のこだわりや感性を活かし、一般企業に真似ができない商品を創る(※6)、これまで廃棄されていた材料を活用して個性的で魅力的な商品開発に結びつける(※7)、障害があっても作業が正確にできる新しい治■具■も一緒に開発して商品の完成度を上げる(※8)など、無理なくつくれて自主商品としての魅力・強みを備えた商品開発が実現しています。これまでのアイデア提供型の商品開発支援では、現場発想型のコラボレーションでは、専門家アクティブラーニング型コラボレーション現場発想型コラボレーション東洋大学福祉社会デザイン学部人間環境デザイン学科教授池田千登勢〜インクルーシブデザイン・コラボレーションの効果〜福祉事業所の自主商品開発支援のあり方働く広場 2023.9
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