拭き上げ作業、車内清掃などの資格がなくてもできる業務を行ってもらうことで、現場の大きな負担軽減につながることを実感しているという。管理部総務グループの係長として、採用担当を務める佐さ藤と大だ地ちさんによると、「入社してくる実習生たちに共通しているのは、やはり“車が好き”ということですね。障害者雇用の採用条件には自動車免許の取得はありませんが、入社後にほとんどの人が取得していますし、いつの間にか車も持っています」とのことだ。契約社員として働く彼らの平均賃金は、秋田県内の自動車小売業の特定最低賃金(※1)よりも高い設定だそうだ。職場実習である程度の人間関係ができるとはいえ、本人の特性などについては入社後に知ることも少なくない。人によっては現場の対応が混乱することもある。そこで秋田ダイハツでは、入社直前の3月ごろ、本人をよく知る母校の先生を職場に招き、受入れ先の社員らに向けて、本人の行動特性や、一緒に働くうえでの対応の工夫などを教えてもらうそうだ。佐藤さんも、参考になった先生からのアドバイスがいくつもあるという。 「例えば、ある生徒は大勢の人がいる前で注意をしても冗談だと受け取ることがあると聞いていました。そこで職場では、やってはいけないことや直してほしいことがあるときは、別室に呼んで一対一で話すことで、しっかり理解してもらっています」またチック症のある生徒を採用したときは、実習中は症状がわからなかったが、事前に学校の先生から「疲れたときなどに症状が出るかもしれない」と伝えられていた。入社後しばらくして症状が出たが、だれも驚くことなく、適度な休憩をとってもらうなどスムーズに対応できたそうだ。毎年行われている2週間程度の新入社員研修には、障害のある社員も一緒に参加している。遠方から来る社員たちが宿泊施設に滞在する際、簡単な事前説明をしたうえで同室になってもらっているそうだが、佐藤さんによると「予想以上にうまくフォローしてくれて、よい人間関係がつくれています」という。日ごろは佐藤さん自身も県内各地を巡回しながら、個別に声をかけて様子を確認している。なかにはSNSを通じて気軽に近況報告や相談のやり取りをしている社員もいるそうだ。「私たちは職場全体として支援のための制度や形を整えているわけではありませんが、一人ひとりの事情に沿った支援や工夫、必要に応じた対応をしてきました」と佐藤さん。社内には障害者職業生活相談員の資格を持った社員が4人いるが、場合によっては当機構(JEED)の秋田障害者職業センターや、障害者就業・生活支援センターにも相談し、職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣を依頼したり、家族にも協力してもらったりしながら試行錯誤することもあるそうだ。佐藤さんが話す。 「精神障害のある男性社員は、入社時から頼りにしていた上司が異動したことで気持ちが不安定になり、職場に来られなくなってしまいました。このときは支援機関や家族のみなさんにも協力してもらい、『○○さん(元上司)がいなくても大丈夫』ということを納得してもらうまで、時間をかけて話し合い、無事に復帰できました」実際に現場で働く様子を見せてもらっ うい 6一人ひとりに沿った支援整備士を目ざす働く広場 2023.9※1 特定最低賃金:特定の産業または職業について設定される最低賃金。関係労使の申出に基づき、最低賃金審議会の調査審議を経て、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた場合に決定される佐藤さん(左)は、県内の店舗を巡回し社員のフォローも行う管理部総務グループ係長の佐藤大地さん
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