勉強会などにも積極的に参加。集まった企業担当者でグループディスカッションを行い、互いの悩みやうまくいったケースを共有し合うのも貴重な経験となっているそうだ。さらに幸代さんは、社内で最初に障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けた。 「講習では、特別支援学校の先生に教わった、会話のコツや言葉の伝え方などがとてもわかりやすかったです。車いすユーザーの当事者の方の授業も参考になりました」その後も希望する従業員を中心に受講してもらい、いまでは障害者職業生活相談員の資格を持つ従業員9人を、各工場や現場に配置。それぞれが必要に応じて、障害者就業・生活支援センターに相談しながら対応している。人材開発支援の中心をになうおおすみ工場製造課の小お濱ば康や孝たさんも、障害者職業生活相談員の1人。受講した講習で知った『就労パスポート』(※)を、さっそく現場でも導入したそうだ。 「私自身、それまで障害者雇用についての知識がほとんどなかったのですが、この就労パスポートに書かれている内容は『障害のある人だけにいえることだろうか』とも感じました。あらかじめ周囲に知っておいてもらうことで、働きやすくなるメリットは大きいと思いました」現場の障害者職業生活相談員による支援の柱は、こまめな面談だ。入社当初やフォローが必要なときには毎日、その後はケースバイケースで原則月1回~半年に1回程度行っている。小濱さんは「私たちも同じだと思いますが、悩みがあるときは、まず人に聞いてもらうことが一番効果的だと感じています」と話す。いまも小濱さんがよく面談をする1人が、入社5年目の秋あ篠し李り実みさん。2022年から稼働している「かさのはら工場」の製造課に勤務している。取材した日は、さまざまな部品の検査が行われる一角で、薄い部品の数をそろえる梱包作業に取り組んでいた。秋篠さんは当初、一部の上司を除きクローズ(自分の障害について公開しない)状態で本社工場に勤務していたが、かさのはら工場に異動後、落ち込むことが増えたという。小濱さんは「面談したところ、職場環境が急に変わり、本社工場と行ったり来たりすることもあって、精神的に不安定になっていたことがわかりました」。そこで上司も含めて相談し、職場を固定したうえで、職場の同僚たちに自分の特性などについて伝えることにしたそうだ。「周りに助けてもらえるようになって、働きやすくなりました」と秋篠さん。秋篠さんは、いまも仕事で少しのミスがあるとひどく落ち込む傾向があるため、小濱さんたちが周囲から「調子が悪そうだ」という情報をもらうと、すぐに面談をすることにしている。秋篠さんが話す。 「小濱さんや幸代さんが話を聞いてくれるのでありがたいです。いまは9時から16時までのパートタイムですが、いつか正社員になりたいと思っています。なにごともチャレンジだと思っているので一生懸命にがんばりたいです」ホテルの支配人から転身し、2023年4月から働いている従業員もいる。 すまか きの 8基本は面談で話を聞くことホテル支配人からの転身もかさのはら工場製造課で働く池田一博さん※就労パスポート:障害のある人が、働くうえでの自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などについて支援機関と一緒に整理し、事業主などにわかりやすく伝えるためのツール部品の数をそろえる作業を行う秋篠さんかさのはら工場製造課で働く秋篠李実さん人材開発支援の中心をになうおおすみ工場製造課の小濱康孝さんかさのはら工場働く広場 2023.10
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