働く広場2023年10月号
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(2)必要な配慮ます。しかし、テレワークで働く障害者へのヒアリングで掘り下げると、「通勤の負担軽減」は障害者にとってより切実なものであることがわかりました。「右足が動きづらく、最寄りのバス停に移動するだけでも負担感が大きかった」という声や、「身支度などの手間を省けるのはもちろんだが、免疫抑制剤を服用しているため、外出の回数が減れば健康面でのリスクも軽減する」などの声があり、通勤を回避することのメリットは障害によってより大きなものになり得ることが確認されました。また、企業へのヒアリングにおいては、テレワークの利点として、地方在住者や移動困難者を含めたより多くの社員候補者を得られることが指摘されていました。このように、障害者雇用におけるテレワークには、通勤の負担軽減のような重要な利点があることがわかりました。そのため、テレワークという働き方が、障害者の活躍の機会拡大に寄与することが期待されます。 「雇用されている」障害者に対するアンケート調査で、現在の勤務先でテレワークの経験がある障害者に「テレワーク時に必要だと感じた職場の配慮」(複数回答可)についてたずねました。最も多く選択されたのは、「障害特性に合わせた業務上のコミュニケーション」でした。回答結果の詳細は、図2のとおりです。テレワークでのコミュニケーションについては、障害者へのヒアリング調査でも、「コミュニケーションにタイムラグが生じる」ことや、「ちょっとしたことを質問しづらい」ことが課題としてあげられていました。テレワークを実施するうえで、コミュニケー0      ション上の課題が存在することは、企業側も認識しており、それらを解消するための取組みがなされていることが、企業へのヒアリング調査で確認されました。コミュニケーションツールとしては、メールやチャットに加え、web会議システムやグループウェア、携帯電話などが用いられ、用途によって使い分けがなされているようでした。業務上の質問をいつでも受けつけられるようにするだけでなく、雑談などを行う場(チャットやwebミーティング)も設定され、気兼ねなくやりとりを行えるような工夫が見られました。テレワークで多用されるコミュニケーションツールが苦手な障害者もいます。障害者に対するアンケート調査の自由記述では、「(カメラに)映るのが苦手」(視覚障害・精神障害ほか)、「ビデオ通話など画面を見ながらうまく話をすることができない」(精神障害・発達障害)という声がありました。業務上必要なコミュニケーションを取る際には、障害特性に配慮したコミュニケーション方法を選択することが大切でしょう。課題、工夫等を収集することができました。今回の調査研究の結果をまとめた「調査研究報告書№171」(※)は障害者職業総合センターのホームページからご覧いただけます。ぜひご活用ください。しかしながら、web会議システムのようなこのほかにも、テレワークに関するニーズや3 おわりに※https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku171.html◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)図2 「雇用されている」者に聞いたテレワークを経験して必要だと感じた職場の配慮(複数回答)障害特性に合わせた業務上のコミュニケーション業務マニュアル作成や業務補助者の配置等障害に応じた支援機器等の導入、貸与通院や服薬、休憩等の柔軟な時間管理体調が悪い時の休暇取得や緊急時の対応社内研修や教育、OJTの機会の確保孤独感・疎外感についてその他無回答27.416.823.028.919.621.96.07.0102030n=47042.14050(%)働く広場 2023.1029

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