働く広場2023年10月号
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を持つようになったのは、私が代表を務めるビルメンテナンスの会社で「障害のある人を雇用してみたらどうか」と、就労支援機関にすすめられたのがきっかけです。小規模な会社ですが、「清掃業務は可能かもしれない」と受け入れてみました。結局、1年で3人辞めるなど失敗続きでした。ふり返れば当時は、現場でフォローできる人的な余裕がなかったと思います。その一方、障害者雇用にかかわりながら、重  とこと 2入したのです。会社の応接室に飾っておいたと度の障害のある人は特に就労がむずかしいことも知りました。なんとかできないかと思いあぐねていたころ、知人に誘われ障害者アートの展示会に行く機会がありました。そこでなんとなく心をひかれた油絵を見つけ、3万円ほどで購ころ、来社するお客さんがみんな「これは何の絵?」などと聞いてくれました。こんなに関心を寄せてもらえるなら、もっと広く鑑賞してもらい、可能なら彼らの自立に少しでも役立ててほしいと思うようになったのです。そもそも障害のある人たちとかかわり 「作品自体を買うのはハードルが高いかもしれないが、レンタルなら続けられるはずだ」と、障害者アートを紹介してくれた知人らに事業提案をしました。具体的な実現の可能性を調べるため、地元企業が集まるイベントでアンケート調査を行ったところ、「やってみたい」との回答が97%、月々のレンタル料は「3千円」が最も多い56%でした。これならなんとかやれそうだと判断し、事業をスタートさせました。る側が作品管理に気を遣わず、私たちも数カ所同時に貸し出せるメリットがあります。この事業を「まちごと美術館cこotocotoずは宣伝を兼ねて新潟市役所内で無料開催したところ、マスメディアなどに取りあげられたこともあって話題になりました。最初に契約してくれたのは老舗のお寿司屋さんです。そのお店に来店した、数多くの地元の経営者たちの目にとまり、次々と新規の申込みが来るようになりました。約ですが、多くの企業は、作品を替えながら1年、2年と継続してくれています。2016︵平成参加企業172社、設置枚数331枚、作者にお支払いした金額は計700万円ほどになります。貸し出すのは、額装した複写作品です。借り1作品2カ月間︵現在は3カ月間︶からの契」と名づけ、ま心ひかれた油絵を購入――障害者アートのレンタル事業を始めることになったきっかけは、なんでしょうか。肥田野 28︶年~2022︵令和4︶年までの7年間で株式会社バウハウス 代表取締役、まちごと美術館cotocoto 館長肥田野正明さんひだの まさあき 1968(昭和43)年、新潟県生まれ。1992(平成4)年に「バウハウス」を創立、1996年に「株式会社バウハウス」設立、ビルメンテナンス事業を展開。2016年に「まちごと美術館cotocoto」事業を開始。同事業は2018年、公益財団法人にいがた産業創造機構の「第28回 ニイガタIDSデザインコンペティションIDS賞」を受賞。2020(令和2)年には「一般社団法人I have a dream」を発足、代表を務める。働く広場 2023.10街なかの障害者アートが つくる共生社会

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