働く広場2023年10月号
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※今号より「心のアート」で、まちごと美術館cotocoto様のご協力のもと作品を紹介していきます(全5回予定)。ぜひご鑑賞くださいcotocoto職場や店舗などに障害者アートを飾ってもらうことで、それが一般のみなさんに障害のある人を知ってもらう「入り口」になるのですが、その先には、さまざまな効果も現れているようです。ある会社では「絵の話題をきっかけに会話が広がり、職場の人間関係の改善につながった」とか、またある会社では「取引先との商談に好影響を与えてくれた」といった話がありました。スーパーなどの商業施設にも飾っていますが、ある日、「作品を眺めているうちに、なぜだか涙が出てきました。どうもありがとうございます」と、お礼の電話がきたこともあります。私たちが事業として大きな手ごたえを感じたのは、大手ファストフード企業とのコラボイベントです。新潟県内の20数店舗でいっせいに期間限定の店内展示をしました。1店舗あたり2作品で、フランチャイズの3店舗は年間を通じて飾ってくれています。さらに今年は、新潟県内の全店舗の店員が作品を使った特製缶バッジをつけることになり、その制作も作者が所属している施設に依頼することができました。以前、大手コーヒーチェーン運営企業の方か      にち3の店舗は、障害のある人が全国から集まる聖地ら聞いた興味深い話があります。聴覚障害のある人が働いていることで知られる東京都国く立た市のような場所になっているのだそうです。「安心して来店できるから」といって、いわゆるサード・プレイスのような心地よい居場所として利用する人も多いと聞き、なるほどと思いました。私たちがコラボしているファストフード企業の店舗も、作品を描いた本人と家族が記念撮影のために来店してそのまま常連客になったり、お母さんたちがなにかと集まる場所になったりしています。会社や店舗、商業施設などに障害者アートがあることで、そこが「障害のある人にも理解がある場所だ」と認識されますよね。来訪する心理的なハードルが下がり、新たなにぎわいを呼び込むこともあります。そうした変化が、共生社会の一つの形をつくっていくと考えています。のプライベートブランドのパッケージデザインに採用された作品があります。そのスーパーの商品群は地産地消やSDGsに配慮していて、作者や家族からは「ストーリーのある商品に、自分たちについても深く考えてくれた結果であることがうれしい」といわれました。また最近は、つながりができた各地の福祉施レンタル事業をきっかけに、地元スーパー設などと一緒に、授産製品のブランディング販売事業も始めています。これまでは地元の役所や催事場などで買ってもらっていたかもしれませんが、本来の商品価値をうまく引き出せるよう販売方法を工夫すれば、新潟県のお土産や贈答品として選んでもらえるようになるはずです。害のある人の持続可能な経済的自立に向けた一助になることを目ざしていました。親御さんからはよく、「自分たちが亡くなった後の生活が心配だ」という声を聞きます。いまはお小遣い程度かもしれませんが、少しでも永続的な収入として安心材料の一つになればと思っています。 「まちごと美術館の数多くの企業に利用してもらうことで広く知れわたるようになりました。全国にも同じように作品を描いている障害のある人や施設が数多くあり、そのまま埋もれてしまっている、もったいない作品もあります。他県の団体などから相談も受けているので、地域に合わせた事業スキームを展開する検討をしています。が大きな目的です。より多くのみなさんに、より多くの障害者アート作品を気軽に楽しんでもらえる場を、これからもそれがあたり前のように提供し続けられるよう、努力していきたいと考えています。私たちはレンタル事業を始めたときから、障なによりも私たちの事業は、共生社会の実現」については、県内経済的自立と共生社会――レンタル事業は、さまざまな手ごたえもあったようですね。肥田野 ――肥田野さんたちの今後の活動について教えてください。肥田野 働く広場 2023.10

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