現場からはコミュニケーションや作業能力についての評価が高かったうえ、何よりも本人が『ここで働きたい』と強い意思表示をしてくれたことに心を動かされ、採用を決めました」という。入社したAさんは、数年前に別の病気で入院するまで働き続けたそうだ。初めての就職面接会への参加を決めたころ、近隣の霧き島し市にある特別支援学校から「職場実習をしてもらえないか」との依頼があった。鹿屋電子工業の近くに住む生徒を紹介されたという。そのときの実習生が、本社工場製造課に所属する内う田だ大だ輔すさん(27歳)だ。さっそく職場で働く様子を見せてもらった。クリーンルームで無む塵じ服ふの内田さんが行っていたのは、取引先から送られてきた精密電子部品の検査の前工程作業。まず部品の型枠を手作業で割り取り(個片化作業)、部品を専用の検査機械にセットし、通過したものをケースにはめ込む。さらに一定数の部品を取り出して異常がないか目視確認し、本検査へと送り出すという流れだ。本社工場長を務める神か田だ照て和かさんによると、「機械操作は比較的シンプルですが、個片化作業は、商品ごとにどの部分からどのような方法・順序で割るか、細かく指定されています」とのこと。内田さんは、「実習のときから覚えることが多くてたいへんでしたが、自分の成長につながると感じて入社しました。もともと細かい手作業や機械操作も好きで、やりがいがあります。相談しやすい先輩方に囲まれて、とても働きやすいです」と話す。内田さんの上司として本社工場製造課の責任者を務める岡お元も一い郎ろさんは、「ほかの部下と同じように叱咤激励しながら指導しています。内田さんの場合は、一つの作業に集中しすぎて、ほかの機械操作の音を聞き逃すときがあるのが課題です。将来は、職場の責任者になれるよう、がんばってもらいたいですね」。最近は、周囲の仕事の進み具合も把握できるようになったという内田さん。「自分が早く作業を終えたときは、ほかの手伝いをすることもあります。チームワークを大事にしたいです。ほかの機械操作なども覚えて、職場で信頼される従業員になりたいです」と意気込む。内田さんは入社4年目に正社員になった。鹿屋電子工業の障害者雇用は、入社時はパートタイム雇用から始まるが、正社員になる明確な基準は設けていないと瀬戸口さんが説明する。 「現場の上司や支援担当者らの意見を参考に決めています。基準をつくることもできますが、いまは本人の意欲や努力を大事にしてあげたいと思っています」鹿屋電子工業には高齢の従業員もいる。現在最高齢だという74歳の女性は、部品検査の業務にたずさわっている。「75歳まで勤め上げた先輩がいるので、私も可能ならもう少しがんばってみたいです」と遠慮がちに話す女性の隣で、神田さんは「本人がギブアップというまで働いてもらうつもりです」とはっぱをかけつつ、「職場では、年齢や障害の有無で業務内容に差をつけることはありません」と話す。そして、次のように語ってくれた。 「私自身、老眼やモノ忘れがあり、これらも仕事をするうえで“障害”と感じることがあります。『(ある従業員について)何回いっても聞いてくれない』という部 くん いけち りまかうとち ずんる6特別支援学校からの実習生本社工場長を務める神田照和さん内田さんは、検査の前工程作業を担当している本社工場製造課で働く内田大輔さん部品の型枠を割り取る働く広場 2023.10
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