働く広場2023年11月号
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創業100年のナットなどの製造企業自閉症のある実習生を採用自動車から家電やゲーム機、メガネまで大小さまざまな工業製品に使われる金属製のナットや精密機器などの部品を製造・販売する「西に精せ工こ株式会社」(以下、「西精工」)は、徳島市で1923(大正12)年に創業して以来100年を迎える。2008(平成20)年から5代目として代表取締役社長を務めている西に泰や宏ひさんは、専務だった2006年に経営理念、2009年に経営ビジョン、2010年には社是・社訓に代わる「創業の精神」をつくり、人間尊重や大家族主義などを掲げてきた。大きな社内改革のなかで障碍者雇用も    したべ すしろうしい  9進められ、いまでは全従業員243人のうち障碍のある従業員は13人(身体障碍3人、知的障碍7人、精神障碍3人)で、「障害者雇用率」は5・79%(2023︿令和5﹀年8月1日現在)だという。障碍のある従業員は、製造現場を中心に9部署に配属されている。 「職場では、障碍のある従業員を周囲がフォローしつつ、フォローする側が一番成長させてもらうよい循環」を目ざしてきたという同社は、2013年に法政大学など(当時)による「第3回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」中小企業庁長官賞を受賞、2020年には当機構(JEED)の「障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰」を受けた。これまでの取組みとともに、現場で一緒に働くみなさんの様子を紹介したい。西精工が障碍のある従業員の雇用に取り組みはじめたのは、15年ほど前のことだという。当時からかかわってきた、総務部総務課労務係主任の渡わ辺な敏と江えさんによると、「それまでは1人の中途障碍のある従業員がいただけでしたが、ハローワークからの指導を受け、新たに身体障碍のある人を採用しました」。その後2012年に、特別支援学校から職場実習生を受け入れることになった。きっかけは、近隣に発達障碍のある生徒を対象とする「徳島県立みなと高等学園」が開校したことだった。同校からさっそく、職場実習の受入れを依頼され、渡辺さんによると「社長からの『試してみたら』のひと言で決まった」という。実習に来たのは自閉症のある男子生徒だったそうだ。 「検査業務をやってもらいましたが、従業員が1時間ごとに交代しながらつきっきりで指導して、当時は無事に1週間を終えることが目標でした」生徒は1年次から3年次まで計5回の実習を経て採用された。そこに至るまでは生徒と学校、職場それぞれの努力があった。 「実習中の課題を学校側に報告し、本人が次の実習までに克服してくることをくり返しながら、できることを一つずつ増やしていきました。最初は着替えに1時間かかっていたのも、だんだん短くなりました。工場では機械にランプを設置し、点滅する色を見て作業手順を確認できるようにするなど、改善と工夫を重ねました」入社前には従業員40人ほどを集め、本人の特性や具体的な対応方法などについて勉強会を開いた。 「彼はコミュニケーションが苦手でしたPOINT123働く広場 2023.11ナットや精密部品などの製造を手がけている代表取締役社長の西泰宏さん(写真提供:西精工株式会社)★本誌では通常「障害」と表記しますが、西精工株式会社様のご意向により「障碍」としています西精工株式会社は、総務部総務課労務係主任の渡辺敏江さん職場実習や職業評価で、本人の具体的な特性や必要な合理的配慮を把握特性に沿った作業日誌や連絡ノート、ケース会議で就労定着を図る部署ごとに「障碍特性勉強会」を開催し、だれもが働きやすい職場づくりを

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