難病の従業員のために郎ろさんは、従業員最高齢の81歳。60歳の労務係に所属し、本社工場敷地内などの植木剪せ定てを中心に緑地管理や屋外清掃などを担当している。この日は、噴霧器を使って芝生に薬剤を撒いていた。峰さんは徳島県立国こ府ふ支援学校在学時の職場実習で屋内外の清掃作業を担当し、「職場の雰囲気がよいのが印象的でした」とふり返る。当時から指導役を務め、いまも一緒に働く総務部総務課の小お倉ぐ国く太た定年退職後いったん植木職人になったが、そのことを知った西精工から「ぜひうちの植栽を」と再雇用されたそうだ。峰さんは小倉さんに、剪定技術を一から教わってきた。最初はあまりのむずかしさに、やっていけるか不安だったと明かす。 「面の水平な刈上げ、角部分の面取りの加減などがほんとうにむずかしいです。刈りすぎると新芽が出てこない恐れもあり、命あるものを扱っているだけに奥が深い仕事だと感じています」小倉さんは「峰さんは仕事を覚えるのが早く、もう剪定技術は一人前」と太鼓判を押す。「あとは作業の段取りから一人で全部できれば独り立ち。まだ私に頼っているところがあるから、もう少しやな」と笑顔で話してくれた。また峰さんは、2年前から夜間中学校に通っている。「中学校時代は登校できなかった時期もあり、勉強したい気持ちになって通学用に車も買いました」という。クラスには老若男女の生徒が10人あまり。校外学習でお遍路に行ったり、90歳の男性や外国籍の生徒と交流したりと、貴重な経験もあるようだ。そんな峰さんは今年9月、地方アビリンピック徳島大会のビルクリーニング種目で銅賞を獲得した。西精工では初めてのアビリンピック選手だ。藤原さんによると「母校の国府支援学校の協力を得て、勤務時間を使い校内で特訓してもらいました」という。在学中に出場した地方アビリンピックでは銀賞だったそうで、「競争が激しい種目でブランクもありますが、がんばりたい」と意欲的に挑み、再度の受賞となった。いま渡辺さんたちが取り組んでいるのは、難病の従業員が働き続けられるための環境づくりだ。きっかけは40代の営業職の従業員が筋き萎い縮し性せ側そ索さ硬こ化か症し(ALS)を発症したことだという。近く傷病休暇を終えるが入院中のため、リモートワークで週10時間の仕事ができないか、所属部署と外部の支援機関が一緒になって検討中だ。就業規則を変更し、分身ロボット「OオriHヒmメe®」(★2)を活用して実現の道を探っているという。病室のベッドにいても働けるようにす リiうらにいん く んくいくう成長できる職場を目ざした挑戦が続く。るためには、ハード・ソフトの両面でいくつもハードルがあり容易ではないそうだが、渡辺さんたちは、「従業員は大事な家族ですから」と口をそろえる。現場に浸透しつつある大家族主義の社風を土壌に、西精工では、だれもが一緒に働きゅくょう働く広場 2023.11緑地管理業務を行う峰さん峰さんの指導にあたる総務部総務課の小倉さん(右)のアドバイスを受け、作業にあたる峰さん(左)アビリンピックに向け、母校の国府支援学校での特訓に臨む峰さん(写真提供:西精工株式会社)★2 「OriHime」は、オリィ研究所の登録商標です。小倉国太郎さん総務部総務課で働く峰祐紀さんわかりやすく説明した勉強会の資料勉強会の仕切り役を務める林千秋さん(写真提供:西精工株式会社)13
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